魔法にかけられて ページ30
娘が生まれてから、俺たちの生活は一変した
今までのAなら、私生活では何よりも俺を優先してくれたのに、
一花が生まれてからのAの口癖は『ちょっと待ってね』に変わった。
朝、俺が起きてきてソファに座ると何も言わなくてもコーヒーを入れたマグカップを渡してくれたのに、
今は「コーヒーちょうだい」と俺が言うと『ちょっと待ってね』と言われて、
そのまま一花がグズったりすると俺のコーヒーの存在はすっかり忘れらてしまったことだって一度や二度ではない
別にコーヒーにこだわりなんか無いから自分で入れれば済む話なんだけど、
コーヒーがどうとかじゃなくて、連理にコーヒーを渡してもらいたいわけ、俺は
退院して1ヶ月ぐらいはうちの母親が産後の手伝いに来てたけど、
今は正真正銘の俺たち3人家族で
俺はどうしたって仕事を休めないから、育児は必然的にA一人に任せっきりになる
一花とAが退院した初日に『寝室分ける？』とAに言われた時は、それこそ開いた口が塞がらなかった
「それ本気で言ってんの？」
『だって夜泣きするし、何度も授乳のために起きるんだよ？
和くん、寝れなくなっちゃうでしょ』
Aは俺のことを思って言い出したんだろうけど、その時の俺は仲間外れにされたような、はっきり言えばAに拒絶されたような気分になった
「俺が一緒に寝たら邪魔ってこと？」
『そんなこと言ってないよ』
「そう言ってるように聞こえるけど」
『……最初は大丈夫だと思ってても、途中でしんどくなるかもしれないでしょ？
疲れて帰って来るのに、帰って来ても疲れるんだよ、和くん』
「だから一緒にいて疲れるとは限らないでしょって」
『……』
「A？」
『そうかもしれないけど、途中でやっぱり嫌だって言われたり、部屋を変えられる方がやだよ』
「どうしてそう思うのよ？」
『だって…みんなそう言ってるもん』
「Aちゃん、よそはよそ、うちはうち」
『でも、』
「’でも’はなし、とにかく、うちは家族3人同じ部屋で寝るから」
Aは何か言い足そうだったけど、俺が無理やり話を終わらせた
そりゃ俺1人で寝た方がよく寝れるんだろうけど、
Aは夜泣きで何度も起きてるんだろうなとか考えたら、俺は寝た気がしないと思う
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作者名：water lily
| 作成日時：2018年12月31日 15時
