3.your side ページ4
ある土曜日、私は蒼と一緒に散歩をしていた。
「蒼、散歩に行ってくる。」
「え、お待ち下さいお嬢様、まだ今日のノルマが終わっていませんよ。」
蒼が問題集を開きながら言った。が、
「散歩にでも行って気分転換しないと、頭に入らないし。もうクタクタ‥‥」
私はその前に、着物で花を生け、外国人講師のピエールに英会話を習い、ヴァイオリンのレッスンも受けていて、頭はパンク寸前だった。
「なんで私はこんなに習い事をしなくちゃいけないの。」
蒼に愚痴ると、困ったように言った。
「A財閥を継ぐお嬢様に、礼儀としていろいろ教え込むよう、旦那様に言われておりますので。」
‥‥私は、お父様が嫌いだ。
両親は昔から仕事ばかり。
まぁ、世界で活躍するA財閥の代表だから、仕事が忙しいのは分かってる。でも、
『A、まだこんなことも出来ないのか。』
仕事で海外から久しぶりに帰って来ていつもいつも言うことは、こんな言葉ばかり。
お母様は私を褒めてくれるのに、お父様からは厳しい言葉ばかり。
私は私なりに一生懸命やっているのに、それを褒めてもらったことは人生の中で一度もない。
私の相手をしてくれるのは、昔から蒼の父親の松田と、蒼だった。
特に蒼は物心ついた頃から一緒で、いつも隣にいた。
「しかし、旦那様はいつもA様のことを自慢げに話していますよ。」
「それはない。お父様が褒めることなんて、今まで生きてきた中で、一度もなかったんだから。」
私が言うと、蒼は悲しそうに目を伏せた。
私は少し心が痛んだけれど、気を取り直して言った。
「とにかく、散歩に行ってくる。着替えるから出てって。」
「‥‥承知致しました。」
蒼は部屋に一礼して、ドアを開けて部屋の外へ行った。
「‥‥私がいくら努力したって、お父様に認められることはないんだから。」
私はこみ上げてきた涙をこらえて、スタイリストに選んでもらった服を着た。
私は別に格好とか気にしないんだけど、蒼が外に出るときはきちんとした格好を、とうるさいから、仕方なく。
なぜか髪をいじることが上手い蒼は、昔から私の髪型をいろいろしていた。
私から見たら、複雑すぎてどうなっているのかわからなかったけれど。
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ミナ @サブ(プロフ) - 教えてくれてありがとー (2018年6月1日 20時) (レス) id: dbbaa59aee (このIDを非表示/違反報告)
橘美月(プロフ) - 14が2個あるよー (2018年5月29日 20時) (レス) id: 5e15558c97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミナ x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/erijya/
作成日時:2018年4月29日 14時