嫁はいないが、好きな人なら

弐拾弐 ページ24

……と、思ったのだが。

「な、な、なに、を、書けば……」

筆は一向に進まない。
鋼鐵塚宛の手紙が書けない。

「そ、そうだ、母さんたちに書こう。うん。そう、気分転換に」

自分の家族へ手紙を書く。少し照れくさい気がしてならない。
母さんと父さんは元気だろうか。弟はしっかりとやっているだろうか。
……それと、……

「んん？すぐに書けた……」

サラサラと筆が進み紙が文字で埋まる。この調子なら、と新しい紙を用意して書き始める。


鋼鐵塚 蛍様

いかがお過ごしでしょうか。この間はお世話になりました。
ただ今、私は仕事をしながら蝶屋敷での手伝いをしております。
毎日が充実しており……
また、片時もあなたを忘れることができません。
いつかまた会えるでしょうか。その時は再度お話ししましょう。あなたと共にいるととても楽しいのです。
待ち遠しいです。おそらく、私はあなたのこ

「こっこれじゃあ恋文……！！！！」

つらつらと書いていたがいつのまにか恋文のようになっていることに気がついた。
これでは送れないと紙を丸め、くずかごに入れた。

「どうしましょう、こんなんじゃ送れない……」

その晩、Aは考えに考え抜き、やっとのことで手紙を仕上げたのである。

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