あなたをさらいに夜がくる ４【文スト】【深夜廻】

夜廻１６０.だってもう ページ46

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上着ならうずまきにある、という事で、私達はうずまきに来た






店内はがらんとしていて、皆さんは帰ったらしい





夏姉に連絡を入れて、店員のスペースから真っ白な上着をとる





『御待たせしました』


「よし。じゃあ、行こうか」






歩き出そうとした太宰さん



すると







「ワン！ワンワン」


「うげっ」




唐突に、目の前に黒い子犬が飛び出してきた






太宰さんと龍の顔が露骨にひきつる




その真っ赤なリードをひいて








「待って下さい」



一人の女の子が子犬に続いて飛び出してきた







「君、どうしたの！？


今出歩いちゃ危ないよ！


すぐ、おうちに‥‥‥」



「お兄さん達に、渡したい物があって来たの」







敦の声を少女が遮った






私は驚いて、その少女を見る







茶髪のポニーテールを結わえた赤いリボン


背中には、何処か見覚えのあるウサギの形をしたリュック




彼女の足元で、黒い子犬が一吠えした





『‥‥渡したい物、って？』



問いかけると、少女は一瞬視線をさ迷わせる




何かをためらっている様な




そんな仕草だった



でもそれはわずかな間で、女の子は真っ直ぐこちらに向き直ると




「‥‥これ‥‥」



御守りを二つ、差し出して来た



その色は、見覚えのある、赤




私は、ハッとして顔をあげた







『ねぇ、どうしてこれ持ってるの！？』



「A？」








だって、あり得ない









『‥‥これ、ムカデ様の御守りだよね？』








この世界にいる人が、持っている筈のない物




私の震えた問い掛けに、女の子は曖昧に笑う







「‥‥お兄さん達にあげる


お姉さんはもう持ってるでしょ？

これは、ほんとに最後の二つ


ほんとは、着物のお姉さんにあげたのを最後にするつもりだったんだ


‥‥でも、私にはもう要らないから」







その声に、頭がきゅうっ、となった



何処か切ないその声






「‥‥親友にあげるつもりだったの


でも、もう届かないから


だから、私にはもう要らないの」




『‥‥あなた、もしかして』




「お姉さん」



女の子は、笑った




「じゃあ、またね」

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