【文スト】社長と迷いネコ その４【福沢】

福沢諭吉 VS 福沢諭吉 IN 福沢諭吉(４) ページ20

「……ん、ううん……」

レイヤの寝息に声が混ざり。

もしや目覚めたか！？ と、諭吉はすぐさま後ろを振り返る。

しかしレイヤはゴロンと寝返りを打ち、諭吉に背を向けただけで。
しばらくすると、また規則正しい寝息に戻った。

いや、戻ったのは寝息のみで……。

寝返りで大きく振った脚が、タオルケットをはだけさせ。
腰から下が、諭吉の眼前に晒された。

それは、飢えた狼を誘惑するのに充分な……。

なぞりたくなる、緩やかなくびれと……、
熟れた果実を思わせる、丸いフォルム。

！！！！！
………………ぐうっ……

『お前も忙しい男だな。……下がったり上がったり』

うっ、うっ、うるさいっ！！

『撫でてやれ。少しくらいバレやせん』

どこまでも無責任に！
少しくらい、では収まらんから、耐えているというのに！

『……と、言いながら、手が伸びておるぞ』

い、いや、違う、この手は……、つまり、その……

つまり、その……。
震え出しそうな手を伸ばし、覚悟を決めて……。

はだけたタオルケットを掴むと、レイヤに掛け直した。

『……まあ、この娘の寝相の悪さは、なかなかどうして、大したものだ』

ああ、そうだな。

『何時ぞやは、寝返りついでに、私のみぞおちに膝を的確に決めてきた。息が止まったぞ』

ああ、そうだった。

『上から腕が降ってきて、この横っ面を叩かれたことなど、一度や二度ではあるまい』

ああ、その通りだ。

『だが…………………………、愛おしいな』

ああ、愛おしい。

『それに……、泣きながら目覚められるよりは、遥かにマシだ』

ああ、ああ、マシだ。

レイヤの泣き声に起こされた夜。
隣で、まるで子どものように、大粒の涙を流しているその姿に……、諭吉の全身の血が凍った。

すぐに泣き止んだけれど。

夏は、ダメなんです……
と、レイヤは言った。

夢を見るのだと。
四年前の夢を。

『夢の中まで、抱きしめに行けたなら、どんなに良いか知れんな』

夢の中まで、抱きしめに行けたなら、な…………。

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