日常58 武器 ページ24
『三郎がいた。』
一郎から電話がかかってきて、少女は乱数と別れ三郎のもとへ向かう。
「この中にいる。」
「ここは…」
呼ばれたのは準決勝が行われていた会場。
三郎はやはり悔しかったのだろう。
少しひねくれていて、肝心なところで我慢してしまう三男坊を迎えに行こう。
三人は会場内に入っていく。
「…一兄に、Aさん…と二郎。」
「三郎〜心配したんだぞ!」
少女は三郎を見るや否や座っていた三郎に飛びつく。
「…一兄、二郎、僕が弱いせいですみませんでした。」
三郎の言葉に二郎は驚く。
一郎にならまだしも、三郎が自分に謝るとは思わなかったのだ。
それほど三郎が落ち込んでいたという事だろう。
「三郎が弱いなら、三郎よりも早くダウンした俺はもっと弱いな。」
「それは二郎が僕を…」
「三郎、二郎。俺も弱いさ。だから…」
_これから強くなろう。
三人は決心する。しかし少女は
「三人はちゃんと強いと思うけどね。」
これから強くなることに関して異議はない。
彼らは実際ヨコハマに敗れてしまったからだ。
しかし、少女は彼らに自分は弱いんだと思ってほしくなかった。
三人は強いからだ。
「若いのは、私たちの武器だ。」
「え。」
「若い人にしかない勢いがある。何も知らないからこそ我武者羅になれる。若いのは弱点じゃなくて武器だよ。生き急がないで、今を生きよう。」
今日のラップバトルで彼らが一番言われていたのが
中学生なのに〜
高校生は〜
といったニュアンスのディスだ。
しかし、少女は父に言われた。
若さは弱点では無く武器だと。
経験は無いかもしれない。でも、それを武器に変えられるのは若者の特権だ。
世間を知らない?、だから我武者羅になれるのだ。
「あぁ!そうだな。」
「そっか。武器にしたら良いんだね。」
「…。」
三郎はラップバトルに参加して初めてだった。
中学生なのにではなく「中学生だから」というニュアンスで言われたのは。
三郎は「最年少」、そのワードを聞いてどこかネガティブに捉えていた。
自分がなめられているのだと。
頭が良いからこそ、周りの反応も知っていた。
しかし、この少女はそれすらも強みだという。
物事は捉え方次第とはまさにこのことである。
「次は絶対勝ちます。」
真っすぐ澄んだ瞳で三郎は宣言した。
その顔を見て二郎、一郎、少女は安心したのだった。
「よし、ホテルに帰るぞ!」
「おー。」「はい!」「うん!」
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芋けんぴ(プロフ) - 讃良さん» ありがとうございます。私の妄想でニヤニヤしてくださるとは、嬉しいです!気持ち悪いだなんて滅相もない。嬉しい限りです。 (2020年8月2日 12時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
讃良 - こんにちは!すごく面白くて、終始ニヤニヤしながら読ませていただきました(どうか気持ち悪いとか思わないで!)。これからも全力で応援しております。頑張ってください。体調にだけ気をつけて! (2020年8月2日 10時) (レス) id: 0970343196 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 神坂 チトセさん» ありがとうございます。私も、コメントの嬉しさにニヤニヤが止まりません。嬉しい限りです。 (2020年8月1日 23時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
神坂 チトセ - こんにちは、めっちゃ面白いです。ニヤニヤが止まりません(笑)無理の無い範囲でこれからも頑張って下さい(^ ^) (2020年8月1日 20時) (レス) id: 46099f0789 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - マチさん» ありがとうございます。嬉しい限りです。 (2020年7月21日 17時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芋けんぴ | 作成日時:2020年7月14日 22時