夢先のキンセンカ２ ars (ページ6)

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言わない、言えない３ページ6

どんだけ勢いついてたんだよ、コイツは。

ぶつかってきた人影は松本と同じように肩を抑えていたが、松本に気づくと痛みもぶっ飛んだように駆け寄ってきた。

あまりの勢いに内心ビビッて「来るな！」と睨んだが、そいつはお構いなしに松本の両肩を掴んだ。

たいてい松本が睨めば大人も近寄ってこないので、予期していなかったことに面食らう。

「ほんとごめんね！！痛いとこない？てか絶対痛いよね！？
マジでほんとごめん！！ちょっと色々見えてなかったって言うか…」

「ちょ…落ち着け、てか放せ！」

軽くパニックになっているのか、弾丸のようにしゃべるそいつを振り払う。

すると我に返ったようにそいつは両手を顔の横で開いてみせた。

松本と同じくらい背丈があるそいつは見るからに明るい好青年っていう感じで、整った顔に太陽のような無邪気さが透けて見える。

「ごめんね、変なひとじゃないよ。俺、相葉っていうんだ。
今人探してて。わけわかんなくなっちゃって」

その人の申し訳なさそうに詫びる表情は年上っぽいが、けれど、その目には強い焦りと不安が渦を巻いてる。迷子みたいに、泣き出しそうにも見える。

「ねえ、きみ髪がサラサラの男の子見なかった？
小柄でちょっと髪短めの女の子みたいな。あと手とかすっごく綺麗で、目がいっつもうるうるしてて小動物みたいで、でもいざってとき男らしいそんな感じの」

身長このくらいの、と言って相葉が自分の胸ぐらいを手で示す。少し小柄だ。

けど正直会ったことない人の特徴ずらずら並べられたってわからない。

「さあ…悪いけど」

知らない、と返して脇をすり抜けようとしたところで、松本は足を止めた。

ふと、二宮の布団の中で目を閉じた大野の顔が浮かんだ。

男にしては長めのさらさらの柔らかそうな髪に、中性的な顔立ち。特徴は矛盾しない。

「…その人ってさ、左胸に切り傷みたいな跡あったりする？」

雪でぬれた服を脱がせたときに目に留まった傷跡。塞がっていたけど痛々しく見えて松本は目を逸らした。

「それって…うん！多分おおちゃんだ！！
なんで？どうしてきみ傷のこと知ってるの！？」

目を丸くした相葉にまた肩を掴まれた。どこから説明していいかわからず戸惑う。

「きみおおちゃんの居場所知ってるんだよね！？とりあえず連れて行って！」

居場所が分かったというのに、むしろ何かが張り詰めていく相葉の目に松本は違和感を覚えながら頷いた。