ライオンと猫３ ページ28
突然の登場にぽかんとしていると、相葉が松本を見てニコッとして言った。
「そろそろ手、放したげて？
おおちゃん泣いちゃうから笑」
その言葉に我に返っった松本は大野からぱっと離れた。
そして前に大野と会った時のことを思い出して、ばつが悪くなる。
一見柄の悪い松本が小柄な大野を力づくで押さえつけているようなこんな状況、いじめているか、カツアゲしてるようにしか見えない。
なんだか傷ついて項垂れた松本に、
「そんな落ち込まなくても、松潤がおおちゃんいじめてたなんて思ってないよ。
おおちゃん結構頑固なとこあるからねーゆるしてあげて？」
松本が考えたことを見透かしたように相葉がまぶしいくらいの笑顔を浮かべる。
ちらりと相葉をうかがった松本に、相葉は昨日お鍋囲んだからそんくらいわかるよって笑って大野をよしよしと撫でていた。
「てかその手、どしたの？」
松本の手にくっきり残った歯型に気が付いて相葉は「痛そう」とまるで自分が痛いかのように顔をしかめた。
その視線を追いかけた大野までもが、痛そうな顔をしたのを見て、
いや、あんたが噛んだんだよ！とツッコみたくなる。
「…猫に噛まれた」
ぼそっと不貞腐れたように呟いた松本に、相葉が意外そうな顔をした。
「松潤猫飼ってるの？」
「…飼ってねえ」
「え！じゃあ野良に噛まれたの！？
だったら病院行かないと！俺車出すからすぐ行こう！ねっ？」
すぐにでも松本を引っ張っていかんばかりの相葉に、大野がばつが悪そうに相葉の袖を引いた。
「俺が噛んだんだよ」
「…おおちゃん、猫ちゃんだったの？」
キョトンとした相葉に大野が弱った笑みを浮かべる。
「逃げらんなくてパニクって噛んじった」
「やっぱ逃げようとしてたんじゃねえかよ！」
ギロっと視線を向けた松本に大野はうっと気まずそうに目を逸らした。
「…ごめん」
「だったら目を見て言え、目を！」
「やだよ…だって松本くん怒ってんじゃん」
「怒ってねえよ！」
「やっぱ怒ってんじゃんかあ…」
泣きそうな声で言って相葉の後ろに隠れた大野に、相葉はなんだか曖昧な顔をしている。
「おおちゃんがパニクるなんて珍しいね」
「普通パニクって噛むか？リアルに猫かよっ」
「だからごめんて…」
不機嫌な松本に大野がますます眉を下げる。
ちょこんと覗いた小動物のような目が可哀想に見えて、松本はため息をついて矛を収めた。
終わり
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作者名：スイミー | 作成日時：2018年2月28日 11時
