第二百二十話【さようなら】 ページ33
出口はもう近い。その証拠に光が強くなっていた。
だが、既にこの空間を維持できないのか、道が崩れ始めていた。
その時、『骸骨の舞跳』が短く悲鳴を上げた────
"A、離して......"
『骸骨の舞跳』の下は奈落の底。此処を落ちれば二度と戻れないだろう。だが、その落ちゆく手を秋田は掴んだ。
「こんな所で離せないよ!一緒に帰ろうよ!」
"そうだよね。貴方はいつもそうだった"
『骸骨の舞跳』は昔を思い出すように静かに呟く。
"だから、これは......これだけは貴方に伝えなきゃいけない......"
「えっ......?」
その瞬間、『骸骨の舞跳』の手を通して、知らない筈の記憶が私の頭に流れ込む。これは私の記憶ではない。『骸骨の舞跳』が見てきた記憶だ。私がこの世に造り出されてから?今この時を生きるまで......
一瞬のうちに秋田の頭へ莫大な量の記憶量が流れ込み動けないでいると......
パッ......
『骸骨の舞跳』の手が私から離れた。
「あっ......アァ!」
秋田はすぐに『骸骨の舞跳』に向かって手を伸ばす。
しかし、それも叶わず『骸骨の舞跳』は奈落に向かって落ち続けていた。それでも『骸骨の舞跳』は焦りもない表情で秋田を見る。
そして、心の底から叫んだ。
"......【黒】!"
その声に【黒】が反応し、飛び上がる。そして、『骸骨の舞跳』に向かって手を伸ばす秋田を抱え出口に向かった。その時、秋田が先程までいた道が崩れた。
「【黒】!助けてよ!『骸骨の舞跳』も助けてよ!」
秋田は必死に叫ぶが【黒】は振り返らなかった。
だが、その姿を見届けた『骸骨の舞跳』は小さく笑みを浮かべた。貴方に会えて幸せでしたと、心から笑うように。
"貴方は生きて......!この世界で生き続けて......!"
もう自分の目にはほとんど秋田の姿は見えない。声も届いているのかも分からない。それでも最後まで貴方のために言葉を掛ける。
"A、今までありがとう"
【黒】は秋田を抱えたまま、出口に向かって放り込んだ。その瞬間、誰かが秋田の腕を掴んだ。それによって、意識も現実に引き込まれ始める。
徐々に薄くなる景色の中で【黒】の方を見れば、その背後にはあの異形達がすぐ後ろまでに迫っていた。だが、【黒】はもう何もしないようにその場に漂っていた。そして、黒い霧の中に巻き込まれ、その姿は見えなくなった。
「......ッ!待って......!皆んな!」
第二百二十一話【本当の】→←第二百十九話【血の繋がりはなくとも】
161人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
トキハル(プロフ) - 藍染紅琳さん» コメントありがとうございます!無事に完結することができました。そう思っていただけたのなら私も嬉しいです。私も知っている作品がありましたらぜひ読ませていただきますね(^^) こちらこそ応援してくださりありがとうございました! (2023年1月31日 15時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)
藍染紅琳(プロフ) - 完結おめでとうございます!!トキハルさんの書く文章を読んで私、漸く作者側に戻ってみようと思うことが出来ました。今度は私の作品を読んでいただけたらとても光栄です^^本当にお疲れ様でした!! (2023年1月31日 10時) (レス) @page40 id: 94358f61cd (このIDを非表示/違反報告)
トキハル(プロフ) - 藍染紅琳さん» たくさんお待たせしてしまってすみません(┯_┯)ずっと待っていてくださりありがとうございました! 後編もまた来週くらいには上げられるように仕上げていきますので、今もう少しお待ちしていただけるとお願いしますm(_ _)m (2023年1月28日 10時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)
藍染紅琳(プロフ) - 続編おめでとうございます!!そしておかえりなさいです!ずっとずっと待ってました^^戻ってきて下さっただけで嬉しいです!!更新応援してます!! (2023年1月28日 7時) (レス) id: 94358f61cd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:トキハル | 作成日時:2023年1月26日 23時