検索窓
今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:40,244 hit

第百二十一話【別の存在】 ページ25

【中原side】


女に手を出すのは俺のギリじゃなかった。だが、これは戦争だ。誰にでも(なさ)けを掛けていたら、首領の期待に応えられない。しかし敵とはいえ、秋田は俺の知り合いだ。重力に堪えながら、苦しむ姿に胸が痛まない訳ではない。だが、これ以上秋田に危険な目に合わせない為にも、これが俺にとって最善の方法だった筈だ。


俺は真っ直ぐ坑道の奥へと歩き出した。坑道内に響く足音は此方に向かってくる音も、追い掛けてくる音もなかった。ただ坑道内で自分の足音だけが反響する。そして、暫く歩みを進めた時......




ゾワッ......!




突如、背後から得体の知れない気配を感じた。


俺は直ぐに背後へ振り返った。しかし其処には俺の重力に堪える秋田がいるだけ......何も出来る筈が無かった。


(気のせい......か?)


直ぐに振り向こうとしたが、


シャキン......


何故か首に刃物が当てられているような感触がした。動けば死が迫るような殺気。これまで、このような殺気を出す人間に出会った事がなかった。この場にいるのはただ一人。その者がやったとするならば......


俺は秋田に目を向けた。


すると秋田は高重力も何も無かったように立ち上がっていた。そして彼女の髪の間から見えた目には暗い光が灯っていた。まるで意思の無い人形が、こちらを見つめているような目だった。


「お前は誰だ。一体何者なんだ」


今まで見てきた秋田の姿とはかけ離れた存在がそこにいるように思えた。彼女の姿を借りた彼女とは別の存在......


秋田の手を見ると秋田の右手には刃折れの小刀が握られていた。まさか......その刀で俺の重力を切っただと?


「まじかよ。俺の重力を破るなんて......くっ......はっはっはっ、こりゃ、面白れぇ」


今まで会った事の無い奴と対峙している。そんな巡り合わせに感謝したい程だった。


「いいぜ、そこまでやるならやってみろよ」


その言葉の後、俺は秋田に殺気を飛ばした。その瞬間、首に纏わり付いていた殺気が消えた。目には目を、歯には歯を、殺気には殺気を。同等またはそれ以上の殺気を飛ばす事で相手からの殺気を相殺した。


殺気が消された事で相手は狼狽(うろた)えると思ったが、秋田は相変わらず、意思のない目で此方を見るだけだった。


そして秋田は静かに刀を構えた。相手は既に戦う覚悟でいるようだ。それならと......俺も相手の動き反応できるように構えた。


互いに相手の出方を伺っていると......

第百二十二話【助ける理由】→←第百二十話【方法は知っている】



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (33 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
101人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

トキハル(プロフ) - 長らくお待たせしましたm(_ _)m 更新始めていきます。 (2020年3月4日 15時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:トキハル | 作成日時:2020年3月4日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。