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第百十八話【強者の風貌】 ページ22

「よう...... 久しぶりだな A」


中原が私の存在に気づいた。


彼を取り巻く雰囲気は正に強者の風貌。彼と初めて会ったあの日の夜と同じ威圧感だった。 体が震えそうになるのをなんとか堪えた。本能的にこの人と戦ってはいけないという勘が身に染みているかのようにも思わせられた。


太宰から中原の事は聞いていた。現五大幹部の一人であり、ポートマフィアで一二を争う体術の使い手。そして、触れたものの重力を操る異能操作。相当な実力者で間違いはない。


私は落ち着かせるように小さく息を吸い、口を開いた。


「此処には何をしに来たんです?」


探偵社は極秘に旧晩香堂へ拠点を移したが、既にポートマフィアには筒抜けだった。ならば、今は何処で情報が漏れた事を気にするよりも、目の前の事に対処する事が優先事項だ。先ずはマフィアの目的と情報の真偽を(はか)らなければいけない。


「それを今訊くか?分かってんだろ?」


「だから、貴方に訊くんですよ」

 
「じゃあ......敵拠点の制圧って言ったらどうする?」


中原はほくそ笑むように云った。


その言葉は私達探偵社にとって最悪のシナリオだった。今の状況を考えれば、そう答えるのが当然のように思っていたのかもしれない。しかし......




「嘘ですよね」




私ははっきり言った。


「何......?」


「五大幹部の一人である貴方が、態々(わざわざ)危険を犯してまで単身で敵拠点に乗り込む必要はない。本気で相手を潰そうと考えているなら、大人数で部下にやらせた方が確実です。でも、そうはしなかった......だから他に理由があるんじゃありません?」


組織の首領が優秀な人材を態と手放すような真似はしない。マフィア側の思考が読めない中、それだけは結論づけられた。


「随分と勘がいいんだな」


「これでも探偵社員の一人ですから」


状況から掴める情報整理、長年に渡って養われてきた勘。探偵社に入ったからこそ身についた能力が私の武器だった。


「そうだ......手前も探偵社の一部だったな」


「えぇ、だからマフィアの本当の目的を教えてくれませんか?」


相手の威圧に震え続ける私ではない。私は自らを奮い立たせた。

第百十九話【格の違い】→←第百十七話【The strategy of conflict】



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トキハル(プロフ) - 長らくお待たせしましたm(_ _)m 更新始めていきます。 (2020年3月4日 15時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:トキハル | 作成日時:2020年3月4日 14時

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