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第百八話【泡沫の安寧】 ページ12

再び目を覚ました時、見覚えのある天井が目に移った。体を起こすと、私は探偵社のソファで寝かされているのに気がついた。


長い夢でも見たいような気がした。確か夢の中で、誰かが何かを言っていたのを思えているが......しかし、その先の内容も(おぼろ)げになってしまい、うまく思い出せなかった。きっといつか思い出す筈だ。私はそう期待しながら、思い出すのをやめた。


そういえば、組合と交戦したと云うのにも関わらず、体に痛みはなく、怪我は綺麗さっぱりと無くなっていた。


「全く、腑甲斐無いねェA。大量出血・多数裂傷・肋骨骨折......妾の能力が無きゃ、今頃土の下だよ」


与謝野がカルテを見ながら私に近づいた。


どうやら、私の体は与謝野の異能によって治療されたらしい。


「与謝野先生......!この度は、お世話になりました」


「あんまり無茶するんじゃないよ。まぁ、アンタの救援信号のお陰で何とか間に合ったみたいだしね」


与謝野は私の頭に手を置いた。周りを見渡すと国木田・敦・賢治も与謝野に治療され、椅子に寝かされていた。無事である彼らの様子に一先ず安心した。しかし、鏡花の姿が見えないことに気が付いた。


「あの与謝野先生、それで鏡花ちゃんは?」


私は与謝野に訊いた。


その言葉に与謝野は目を伏せながら口を開いた。


「判らない。連絡が取れないンだ」


「そう......ですか......」


鏡花は賢い子だ。きっと何処かに逃げている筈だとそう信じたかった。私はただ鏡花の無事を祈る事しかなかった。そこへ......



「工合は如何だ?」



そう云いながら、社長室から福沢が出てきた。


その声に気が付いたのか、国木田と敦が顔を上げ立ち上がった。


「社長、申し訳ありません。俺が居ながら」


国木田が申し訳なさそうに言葉を口にした。


「佳い、少し出る」


福沢は振り向き、事務所の出口へ向かった。


「でも、今外出は......」


敦が止めに入ろうとしたが、福沢は早々に事務所から立ち去ってしまった。


「ハァ、ありゃ相当鶏冠に来てるね」


与謝野は云った。


「社長は大丈夫でしょうか......」


敦はまだ心配するように扉の方を見続けていた。


「大丈夫。福沢様は強い人だから」


私はそうはっきり答えた。

第百九話【諸刃の剣】→←第百七話【未来は自分次第】



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トキハル(プロフ) - 長らくお待たせしましたm(_ _)m 更新始めていきます。 (2020年3月4日 15時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:トキハル | 作成日時:2020年3月4日 14時

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