第百九話【諸刃の剣】 ページ13
それから私は自身の机の椅子に座り、紙とペンを持った。開戦はもう間近に控え、もう時間がない。早々に組合から引き出した情報をまとめなければ。
先程の戦いで組合の相手の素性が分からなくても、能力は知ることができた。しかし、あの場にいた組合六人全ての異能力を引き出すには至らず、特に赤茶色の髪の青年と白い髭を生やした老年の男性の能力はわからなかった。思い通りにいかない事に少し気持ちが沈んだ。
ただそうであっても、私がこうして生きている事が奇跡である事には間違いない。私は覚えている限りに全てを書き綴った。
暫くして書き終えた。後は作戦立案の主力となる太宰に渡すだけ。きっと、彼にとっては重要な情報になる筈だ。私は椅子から立ち上がった。
「与謝野先生。太宰さんが何処にいるかご存知ですか?」
「あぁ、太宰なら......」
与謝野は親指でくいっと医務室の方を指した。
「えっ?まさか、何処か怪我でもしたんですか?」
太宰は異能力無効化の能力者である為、与謝野の異能力である『君死給勿』が効く事がない。もし彼が瀕死の状態に陥っても、そこは現代の医療を頼らざるを得ない。異能力無効化は無敵な能力のように見えるが、実は諸刃の剣でもあった。
ふとその話を思い出し、私の中で不安が駆り立てられた。
「まぁまぁ、行ってみたら判るよ」
私の様子とは裏腹に、与謝野は焦燥感の無い口ぶりで云った。
「はぁ......」
私の口から腑抜けた声が漏れた。
行ったら判るとはどういう意味なのだろう。私は言われるがまま、医務室へ向かった。
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トキハル(プロフ) - 長らくお待たせしましたm(_ _)m 更新始めていきます。 (2020年3月4日 15時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:トキハル | 作成日時:2020年3月4日 14時