虹空315 ページ36
[Noside]
「タルタロスのマスターはこのマルドギールではなくENDだ。今はこのような姿だがな」
マルドギールの掲げた一冊の古い本を目にしてナツは驚愕する。太陽の村でアトラスフレイムの残留思念から聞いたイグニールが倒そうとして倒せなかった悪魔が目の前の本だと言うのだ。
ナツは両腕に激しい炎を纏いながらマルドギールに宣言した。
「……ならテメェを倒してその本も燃やしてやる!!」
「ほう……竜の子か。しかし勝てんよ。このマルドギールにはな」
「上等だ!燃えてきたぞ!火竜の鉄拳!!」
「無知な……」
ナツの繰り出した拳を簡単に受け止めながらマルドギールは呟いた…。
「換装!黒羽の鎧!黒羽一閃!!」
「ぐうっ!調子に……のるな!!」
エルザの鋭い一撃を呪力を込めた腕で受け流しながらミネルバはエルザのいる空間の属性を爆発へと変化させた。爆炎に包まれたエルザだが……
「うおおおっ!!」
「何っ!?ガハッ……」
煙を突き破りながら突撃してきたエルザの拳を受けてミネルバは壁まで吹き飛ばされる。
「くっ!わ……妾は最強の魔道士になったはずだ!これでどうだ!!」
「そこだ!!」
「ガハッ!!」
すぐに立ち上がったミネルバはエルザの背後の空間と自分の空間を入れ換えて瞬時に襲いかかる。だがエルザはそれを読んでいたのか振り返らずにその攻撃を躱して剣を持っていないほうの拳で再び殴りつけた。
「大魔闘演武での貴様の所業……許した訳ではない!だが今の貴様はあの頃よりももっと最低だ!思い出せ!自分が何の為に戦っていたのかを!!」
確かに大魔闘演武ではミネルバの悪辣さに怒りを覚えたがその行動の全てはセイバートゥースの優勝の為の行為だった。
「今のお前には何もない。こんな戦いに何の意味があるのかと……お前を殴る拳が泣いているんだ」
エルザの言葉にミネルバは俯いて自分の心の内に秘めていた想いを吐露する……
「そうだ……妾が弱かったから……あげくの果てにはこんな姿になってしまった……」
ミネルバが伏せたまま泣いているのがエルザには分かった。ミネルバは実父であるジエンマに子供の頃より虐待とも呼べる訓練を施されていた。
辛くて涙を流していた少女時代……ミネルバが泣くとジエンマは裸で猛獣が蠢く森の中に裸で放置していた。
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