五頁目 ページ5
夕飯を食べ終わった後、私も2人と同じように当てられた個室へ戻った。
部屋には小さめのタンスとクローゼット、丸い机に椅子が一脚置いてあった。隙間風が吹いて来ないだけで既に私には充分に豪華だった。
しかし部屋が豪華に感じただけで特にやる事もない。風呂に入って歯を磨く事ぐらいしかないので大人しくそれを終わらせた。
ベッドに試しに座るとスプリングが柔らかく体に合わせて沈み込んでいく。
昨日まで硬い床で寝ていた体は違和感を感じてしまう。やはりこんな豪華な部屋じゃなくて貧乏な方がお似合いなのかもしれない。
年甲斐もなくベッドの上でぼよんぼよんと跳ねる。しかし楽しいのは束の間で虚しくなるばかりだった。何と無しに「はぁ」と大きなため息が出た。何度時計を確認しても時間は有り余っている。寝るにはまだ早い。
しばらくして何もする事のない空間に耐えきれなくなり私は部屋を飛び出した。
行く宛てもなく歩き回った挙句、結局近場の庭への扉の前に辿りついた。
そういえば、庭はウィラさんに案内された時扉越しにしか見れなかったのでしっかりと見ていなかった。
丁度いい、庭で時間を潰す事にしよう。そう思って私は扉を開ける。
扉を開けると夕日に照らされていた庭は月の薄暗い光で照らされていた。
案内された時の明るい雰囲気は今はない。しかし月の光が丁度入り込む設計になっているのか草木が青白い光で照らされていて夕方とはまた違った良さが感じられる。
壁際は様々な種類の植え込みで彩られていたが、そんなことよりも左手側にあるベンチに座る銀髪の髪を持った人物に私の興味は向いた。
銀色の髪が僅かに入り込む光に照らされていて綺麗だな、なんて思いながら彼に近づく。
もしかして彼が食堂で会えなかったサバイバーではないだろうか。
顔を俯けていて表情は見えない。しかし一定の間隔で上下に頭が揺れているのできっと寝てしまっているのだろうと理解する。
彼が寝ている横には大きめの黒い鞄が置いてある。見慣れないが何が入っているのだろう。
彼を先程から眺めているが起きる気配はない。
ここで魔が差してこの鞄の中身を覗きたいという好奇心が芽生えた。一応私にもなけなしの良心があったので多少自分の中で葛藤したが、好奇心に勝るものなど無いに等しい。
「少し覗くぐらいならバレない」私は好奇心のままに鞄に手を伸ばした。
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野菜 - 感想ありがとうございます！こんな褒められると思ってなかったので嬉しい限りです。引き続き頑張りますので是非たのしみにお待ちください！ (2019年6月27日 16時) (
レス) id: d6aefcc85a (このIDを非表示/違反報告)
saniwanotori(プロフ) - 背景推理からとても丁寧に物語を構成されていて読み応えがありました。不穏な描写の表現も天才的でドキドキしながら読ませて頂きました。こんなに面白くてとても素敵な作品に出会えて幸せです！切実に消さないで欲しいと思いつつ、続きを楽しみにしております (2019年6月26日 23時) (レス) id: 9faba28f95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：野菜 | 作成日時：2019年6月22日 13時
