【金カム】リベラリストは黄金螺旋の夢を見るか？弍 (ページ7)

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「イヤ゛ッッーーー！！！！！！！！」
「落ち着いてっ！落ち着いてスカラさん！！」
「聞いてない！！聞いてないぞ！！！寄せ鯨とちゃうんか！離せッ！木船になんか乗れるかァ！！！！」

海岸に着きアシㇼパの叔父へと連れられ船着場まで案内されたが、その船を見たスカラが甲高い悲鳴を上げて暴れ始めたのだ。杉元が全力で羽交い締めをするがそれでも止まらない…どころか脛だのを蹴られて逆に彼の方が手を離しそうになっていた。不用意に近付いた白石は股間に思いッきり蹴りを食らわされ転がりながら悶えている。地獄絵図という他ない光景だった。

「落ちるやん！！！絶対落ちるやつやんけ！！！！！！」
「普通にしてたら落ちないぞ」
「そんなわけない！！！！！！」

アシㇼパにも大声で否定する始末。いつもの余裕さはどこへやら。

なぜこんなに嫌がっているのかと言うと、スカラが生粋のカナヅチであるからだ。クロール出来ないとかそういう次元でなく、水に浸かることすらもを酷く嫌悪している。
いくら人間であろうと所詮は動物であり、陸に生きる動物は本能からして身体を冷やすことを良しとしない。だというのになぜ自ら入水するんだ。というのが彼女の考え方である。
一見筋が通っているように見えるだろうが、その真意は水に入りたくない…泳げない無理……という情けないことだというのを覚えていて欲しい。数少ないスカラの弱点だった。

いい歳して駄々を捏ねるスカラを見兼ね、彼女を海岸に待たせることにしたのだが…漁に出て程なく、杉元やアシㇼパ達が帰ってきた。

「え、どうしたんだ」
「この人が海に落ちたから助けたんだ。鯨は白石が追ってくれてる」
「あぁ成程…大丈夫かい？災難だったな」

スカラは杉元に支えられた男に話しかけ焚き火の前を譲る。

「セトゥルセセッカ。背中を暖めた方がいい...だったか？」
「そうだ」
「濡れた服もそこで全部脱いじまえよ」

そう杉元が宣えば、見られてる前で脱ぐのは恥ずかしいと言うので毛布を貸してやる。

男の名前は辺見和雄。刺青囚人の一人であり日本各地を放浪しながらこれまでにも百人以上を殺害した殺人鬼。その根底にあるのは「殺されたい」という強い願望であり───この時点で杉元とスカラ両名から自身と同じ人殺しのニオイを嗅ぎ取っていた。