【金カム】リベラリストは黄金螺旋の夢を見るか？弍 (ページ3)

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「アシㇼパさんの父親たちの遺体はどこで見つかったんだ？」
「……トマコマイ」

アペソ(囲炉裏)の灰に北海道を描き、苫小牧の位置に点を置く。

谷垣曰くのっぺらぼうが捕まったのは支笏湖であり、対岸へ逃げようとして転覆したらしい。その際金塊の一部を持ち出していたため重みによって転覆したのではないかと言われているが…支笏湖は日本で二番目に深いため確かめる術は無い。

苫小牧、支笏湖、そしてここ小樽にそれぞれ点を描くと一直線で繋がる。やはりのっぺらぼうの小樽へ行けという指示に間違いはなく、協力者もここにいるのだろう。

とすれば、刺青人皮は地図なのか？と杉元が皮を広げる。杉元達が手にしているのは後藤、雑魚(スカラと暫く一緒に居たオッサン)、二瓶と白石の四枚で、白石が会いたくないと言った津山という男の皮は鶴見中尉が所持しているようだ。よくわからんが軍服の下に着ていたらしい。多分私と話してるときも着てたんやろな〜……とスカラは死んだ目をした。確かに肌身離さずいる方が奪われるリスクも少ないし実際白石に盗まれなかった訳だが、一般的な感性からするとちょっと普通にキモい。

考えた末でのものなのか単純に趣味なのか…どっちもだろうな。頭が切れるのも確かなようだから。

「第七師団本隊を乗っ取るとか言っていたらしいがそれでどうする。クーデターでも起こすつもりか？」
「金塊がそんなにたんまりあるんならよお、お仲間と山分けして遊んで暮らそうって発想にならんのか？なんだって第七師団を乗っ取ろうなんて物騒なことを…なにがあった？」

スカラと白石がそう質問する。

「旅順攻囲戦だろう」

谷垣が一拍おいて言った。

勝利はしたが旅順攻囲戦に投入された第七師団一万の将兵は二〇三高地を陥落させたころまでには半分以下に。
この作戦の参謀長でもあった元第七師団長の花沢幸次郎中将は手柄を立てようと正面突破に固執し多数の将兵を戦死させたとまで揶揄され帰国後自責の念から割腹。政府部内では花沢中将が自刃したのは部下たちの落ち度とし…勲章や報奨金はおろか陸軍の中での第七師団は格下げ扱いされ冷遇された。

つまり鶴見中尉は死んでいった仲間への餞として、この北海道を占領しようとしているわけだ。