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「銃…銃かぁ……」
「欲しいのか？」
「欲しくないと言えば嘘になるが…やめておこう。長期的な目で見たら負担になる」
キロランケの家を出た後、山賊退治をしたりアシㇼパのコタンへ寄ったりして札幌に到着した。札幌に寄った理由は爆薬や武器を買うためで、小樽にも鉄砲店はあったがアシがつくのを用心してとのことらしい。キロランケはすぐと言ったがかなりの時間を要し、着く頃にはみなすっかり窶れていたが、品評会だか博覧会だかで宿がどこかしこも埋まっていると店主が話す。
「あぁでも、札幌世界ホテルってところは空いてるかもな」
ホテルへ向かう間、アシㇼパのコタンへ寄った際に言われたことをスカラは思い出していた。
「おや、随分アイヌに染まったな？谷垣」
「スカラ」
キロランケと馬の世話をしたあとチセに戻るとアットゥㇱを見に纏った谷垣が待っており、その顔からなにか言うことがあるのだと察した。
「尾形百之助とは知り合いか？」
見開かれたわけではないが、瞳孔がキュッと少し狭まる。谷垣はスカラの睫毛が少し揺れるのを見た。彼女は何も言わないが話の続きを待っているようだ。
「尾形上等兵がこの家に来たときに、スカラという異人の女を知らないかと聞かれた」
彼女はゆぅくりと二度ほど瞬きをする。嘘をつく気は無かったが言葉を選んでいたのだ。杉元達には既に伝えているので、隠したところでどうということは無い。ただ、どこまで言うか。というのが問題で。
スカラは鶴見と会ったことを皆に伝えてない。もちろん尾形百之助の見舞いに来て欲しいと言われたことも。いつ言おうか迷っていたら鶴見に杉元達と絡んでいることが知られたので、言わずともいいだろうと捨ておいていたのだ。
「アー…ここに来たとき最初に会った奴でな、街まで案内してもらう約束で少し共に行動した」
「本当か？それだけで訊いてくるとは思えないが」
「こっちが知りてぇ〜なんで私アイツに探されてんだ？なんかした覚えないんだけど」
スカラは本気で思い当たる節が無かった。自分の何があの男の琴線に触れたのか分かっていないのだ。彼女にとってはたった数十分一緒に行動しただけで、上司に頼んだり押し掛けてきて訊いてくるほど、気にかけられるような事は起こしていないと思っている。まぁスカラからして見ればの話だ。
そして今度会ったら訊いといてくれや、という彼女の言葉を最後に会話は終わった。谷垣に第七師団へ戻る意思はもう無かったのだ。
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作者名：mYDEAr | 作成日時：2024年3月13日 11時
