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チ ョ コ 2 ページ22

沖田side
·

玄関のドアを開ければ、やはりAがいた。
とんでもない寝坊助のAは、いつもギリギリの時間に家を出る。彼女と遭遇し、一緒に登校するために、わざわざ俺も遅刻の瀬戸際に家を出るのだ。

「…また遅刻ギリギリじゃねェかおめー」

口から零れたのは悪態。
Aは『あんたに言われたくない』とそっぽを向く。
もう少し素直になれたら、と自分でも思うが、この口の悪さと捻くれは治らない。ずっとAに片想いしているのに、全然伝わっていないのはそのせいだろう。

「なにぼさっとしてんでィ、」

悔しくなって彼女の腕を掴む。抗議を無視して走り出す。
ああ、今が冬でよかった。例え耳が赤くなっていたとしても、寒さのせいだと誤魔化せる。
しっかりと彼女を繋いだまま、俺は通学路を駆け抜けた。


***


どさどさ、と大量の箱や袋が滑り落ちた。

「…んだこれ」

靴箱の扉を開けた途端出てきたそれ。
よく見ると、箱はラッピングされていて、袋もファンシーなプレゼント袋といえるものだった。ひとつを取り上げて良く見る。

『どうした、の』

俺がなかなか靴箱から出てこないことに訝しがったのか、Aがひょっこりと顔を出した。
かわいい、と胸をつかれた自分はとりあえず棚に上げておくことにして、答える。

「これ、全部チョコでィ。そういや今日、バレンタインデーか」

去年も一昨年も大量のチョコは貰ったが、靴箱に詰め込まれるという経験は初めてだった。とりあえず床に落ちたチョコと、靴箱の中に残っているチョコを拾い、たまたまリュックに入っていたビニール袋に詰め込む。

『うわあ、酷い扱い。どれもすごくいい出来、なのに』

哀れむように袋の中を覗き込むA。眉毛が微かに下がっている。

「別に、いいだろィ」

…俺の、チョコが欲しい相手はAひとりだし。
ちらりとAを見る。遠くを見つめるAは、目を合わせない。
せめて義理でもいいから、こいつからのチョコが欲しい、なんて欲がむくむくと湧いて。ちょうどチョコのことが話題に上がった今、渡してくれるんじゃないか、なんてちょっと期待した。
まあ、打ち砕かれる訳だが。

『あ、神楽』

友人の姿を見つけたAは、たったと走っていってしまった。
そして、リュックの中からなにかごそごそと取り出して手渡している。あれは、所謂友チョコ、だ。
…どうやら俺には、義理も、友達としてでも貰えるチョコはないらしい。
現実を思い知らされて、重くため息をついた。

チ ョ コ 3→←チ ョ コ《沖田総悟》



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みるくれーぷあいす(プロフ) - 氷華さん» ありがとうございます!嬉しい限りです! (2019年12月25日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
氷華 - 神威君ーーーーーーーーー! この小説いいね♪ (2019年12月25日 12時) (レス) id: e5c89771f4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月27日 1時

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