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妙side
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九ちゃんがタクシーの運転手に住所を告げた。サングラスをかけた運転手は頷いてアクセルを踏み込む。運転席の背中部分に貼られたカードによれば、彼の名前は長谷川泰三というらしい。
「本当に今日は凄かったなぁ」
「そうね。買い物に来た目的も、サトウさんのことも、会社の休日も、先輩のことも…ここまで同じことがあるなんて」
窓の外に流れていく景色を見ながら、私と九ちゃんはしみじみと呟いた。こんな出来事の重なりが実際に起きるだなんて、不思議極まりない。
しかも住所に関しては、お互い長い間近所だったのに気づかなかったのだ。なにか意味があるんじゃないか、なんて想像してしまう。
そこで九ちゃんが、あ、と声を上げた。
「聞いたことがあるぞ。こういう、なにか意味がありそうな偶然の一致が起きること…ええと、なんだったかな」
「…シンクロニシティ、ですか?」
いきなり運転手──長谷川さんが口を開いたのでびっくりしてしまう。彼は笑って「いや、すみませんね」と説明し始めた。
「多分それ、シンクロニシティっていうやつですよ。偶然の一致が続く現象。お客さんの話が気になって、つい口挟んじゃいました」
バッグミラーに見える、サングラスをかけた長谷川さん。シンクロニシティ、なんて言葉があるのか。
「あ、そうそう、それだ。それです、シンクロニシティ」
九ちゃんが納得したように手を叩く。長谷川さん曰く、虫の知らせのような予知的なものもシンクロニシティと呼ばれているそうだ。
私は感心しながら、二人の知識に相づちをうった。世の中、色々なことがあるんだな。
「俺も体験したことあるんですよ。かなり昔なんですけどね」
「そうなんですか!どんなものだったんですか?」
私は思わず尋ねてしまう。自分が体験しているからか、どんな経験かすごく気になる。
「お二人さんのようなことではないんですが…ある日、夢の中にある人が現れて。俺に助けを求めてくるんですが、何故か俺は一歩も足が動かないんですよ。で、目が覚めたらその人が亡くなったって電話がかかってきて」
それって…いわゆる、予知夢、なのか。
想像以上の展開に私は驚く。九ちゃんも目を丸くして、「すごい偶然の一致だ」と感想を漏らした。
「シンクロニシティは、人の死が関わることもあるそうですから」
自分が死ぬ時に何かとシンクロしていたら、怖いような、驚くような。なんとも言えない感覚を感じて、私はシートに座り直した。
「…あっ!」
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みるくれーぷあいす(プロフ) - ちぃなさん» ありがとうございます!これからも楽しんでいただけると嬉しいです。 (2019年10月30日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
ちぃな - ホラー好きなので嬉しいです!更新楽しみにしてます。 (2019年10月29日 14時) (レス) id: 43ae00df60 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 綾葉メグさん» ありがとうございます!マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします。 (2019年10月27日 17時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
綾葉メグ(プロフ) - 面白いです!更新楽しみにしてます! (2019年10月27日 15時) (レス) id: fe3feae032 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年10月15日 1時