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カ ク シ 4 ページ44

土方side
·

かくれんぼ。
言葉がぐるぐる回る。

言葉は俺を隠す。


***


Aは総悟の肩を叩く。
振り向いた総悟。よく見れば、総悟も片手を後ろに隠している。
ここから二人の会話までは聞こえない。
ただ、Aが、白くて小さな何かをおずおずと差し出すのが見えた。
後ろで沸く歓声。
決定打だ。彼女にとっても俺にとっても。

総悟はそっとそれを受け取る。
そして、後ろ手に隠していた桃色の小さな何かを見せる。
盛り上がりは最高潮になった。
俺はただ見ているだけの観客だった。

Aは桃色を握りしめると、顔を上げた。
2人の顔が赤くなっているのが見える。
総悟の口が動く。四文字の言葉を言う。
Aの口も動く。二文字の言葉を返す。

何を言ったかわからないけど、想像はついた。

うおおぉ、と後ろで一際声が上がる。
総悟の腕の中に、Aがいた。
Aもゆっくりと総悟の背中に腕を回す。
近くにいた観光客達も驚いた様子で見ている。

ふたりは体を離した。
総悟がAに顔を近づける。
もうすぐ、ふたりの唇が触れ合う。



俺はそこで、背を向けた。
ふたりをみながら呆然としているクラスメイト達の脇を通り抜ける。
さすがにもう、見ていられなかった。
こうなったのは、なんでだろう。
きっとAと総悟は心からの幸せを味わっているはずだ。好きな奴と思いが通ったんだから。
祝福している。どちらの思いも知っていたから。
だけどさあ、と駄々をこねる自分がいて。
なんで総悟だったんだろう。
感情に理屈で文句をつけられないことはわかっているくせに、俺のどこかが叫んでいる。


俺のことを好きになってくれたって良かったじゃねえか。


わがままで自己中で、幼稚すぎる感情を何とかとどめる。でないと、ぶちまけそうだから。
こんなにも俺はあいつが好きだったのかと思い知らされる。

奥歯を噛み締めて、押し殺す。


かくれんぼなんて、したくなかった。


***


祇園の街並みをゆっくりと歩いて回る。
初デートに勤しむカップルは、早速手を繋いでいて、お似合いとしかいいようがない。

何かの残りかすが胸の奥で燻っている。
それが何であるかは分かりたくない。
認めたくない。
面倒臭い奴だな、と自分で思う。


『土方くん!』

さっきまで総悟と一緒にいたはずのAが、俺の元に駆け寄ってきた。

「どうした?彼氏と一緒に居なくていいのか?」

『からかわないでよ、もう』

土方くんに渡したい物があって、とAは胸を張った。

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みるくれーぷあいす(プロフ) - 鈴神さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます!これからも鈴神さんにそう思っていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします。 (2019年8月24日 13時) (レス) id: 0de76de774 (このIDを非表示/違反報告)
鈴神(プロフ) - こんにちは!突然ごめんなさい(汗 作品読ませて頂いたんですが、一人一人の気持ちがとても丁寧に書かれていて一つ一つの話にすごく惹かれました!!ほんとに素敵なお話ばかりなのでこれからも応援してます!頑張ってください!! (2019年8月24日 1時) (レス) id: de3968cf62 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月13日 1時

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