カ ク シ 《土方十四郎》 ページ41
土方side
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かくれんぼ、とはよく言ったものだ。
幼い頃の無邪気な遊び。言葉のもうひとつの意味なんて知らないガキの遊び。
***
『ひっじかったくーん!』
どてどてと駆けてくる女。
いつもの如く走るなと注意しようとして、言葉を失う。
『どう!これ似合ってるかな?』
修学旅行先の京都。
2泊3日の2日目、朝に着物を着て、そのままグループ別に自由行動。
たった今着付けを終えて、自由行動のスタート場所で班のメンバーを待っていた。
「…いいんじゃねェか」
俺の次にやってきたA。
綺麗な着物を身にまとった彼女に見惚れないわけがない。
『ほんと?よかった!』
いつもは下ろしている髪の毛をまとめて、いつもより微かに赤い唇で。袖をひらひら動かすAは綺麗で、可愛すぎて。
「…あァ」
良かった、と笑う彼女。
その言葉が、俺に対してのものだったらよかった、なんてことを何回考えただろうか。
『沖田くんも、いいと思ってくれるかな』
俺はAのことが好きで。
Aは俺の幼なじみ、沖田総悟が好きだ。
まるでどこぞの漫画のような展開。だが、これは、三角関係ではない。
なぜなら、総悟は、Aが好きだからだ。
___と、事実だけ述べれば、俺は両想いを邪魔するお邪魔虫以外の何物でもない。そんなこと、痛いくらいにわかっているのに。
「そうだといいな」
わかっているのに、一度抱いてしまった恋心は消えてくれない。
笑うAに、愚直に高鳴る心臓の音。
『ほんとにありがとう、土方くんのおかげでなんとか告白できそうだよ』
Aのことを好きになったのは割とすぐだった。だから、Aが総悟のことを見続けているのに気づくのも早かった。
可能性を振り切りたくて、「お前、総悟が好きなのか」と尋ねたときの彼女の赤くなった顔と伏せられた目と、弱々しい『うん』の声。否応なしに脳裏に刻まれ。誤魔化すように「応援する」と言ってしまった。
「…頑張れよ」
『うん!』
彼女はいそいそと小さい、白い鈴を取り出す。
うちの学校に伝わる恋のジンクス。修学旅行先で鈴を渡した相手とはずっと幸せになれる。反吐が出るようなこの行動は、【告白】と同義になっていた。
「いつ渡すつもりなんだ」
『清水の舞台のつもり。今紅葉がきれーだし』
ドキドキするな、とAは胸を抑える。
その時、何人かが連れ立ってこっちにやってくるのが見える。
『…あ』
その中には、着物姿の総悟もいて。
彼女が、眩しそうに目を細めて。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 鈴神さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます!これからも鈴神さんにそう思っていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします。 (2019年8月24日 13時) (レス) id: 0de76de774 (このIDを非表示/違反報告)
鈴神(プロフ) - こんにちは!突然ごめんなさい(汗 作品読ませて頂いたんですが、一人一人の気持ちがとても丁寧に書かれていて一つ一つの話にすごく惹かれました!!ほんとに素敵なお話ばかりなのでこれからも応援してます!頑張ってください!! (2019年8月24日 1時) (レス) id: de3968cf62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月13日 1時