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今まで知るはずもなかったことが、次々とあらわになっていく。そのことに私は恐怖しか感じなかった。
「どういう事ですか? 先生はこの世界が“造り物”だとでも仰るんですか?」
怒気のこもった声で木嶋が言った。
先生はゆっくりと彼を見て、淡々と「はい、そうです」と返した。
「では、何故僕達は存在するのですか? 僕達の人間関係や努力などは造り物なのですか?」
木嶋はそうとう受け入れたくないのだろう。そりゃあ勉強を頑張っている彼にとって自分の今までの時間が意味の無い物だと知ってしまったら……もう、終わりだ。
「そうですね、努力が偽物だとは言いません。貴方が頑張っていることも、事実でしょう。しかしそれは、“本物の世界”の貴方と真逆だからこそ必然的に……」
先生が言い終わる前に、木嶋が彼に掴みかかった……ことはなかった。
木嶋の手は宙を掴み、彼はバランスを崩す。
先生は、消えたのではなく──特活室の一番後ろで立っていた。貼り付けた笑みを浮かべながら。
「瞬間移動……?」
力のない声に振り向くと、木嶋がうろたえていた。もう、目に光は宿っていない。努力の儚さを知った彼に待っているのは、まさに絶望なのだろう。
しかし私は……確かに悲しい、悲しいけれど。少し納得してしまった。
だってこの世界は不平等すぎる。誰かが造ったんだろうと、小さい頃から思っていた。
しかし何故この世界……偽物の世界があるのだろう?
「失礼。少し身に危険を感じたので回避させていただきました。では元に戻ります。木嶋君も座ってください」
先生は、今度は歩きながら移動している。
木嶋は彼を睨みながらも、しぶしぶ席に着いた。
「では、何故この世界があるのかですが」
そうそう、それが知りたかったんだ。
「皆さんは、人が羨ましいと思ったことはありませんか? 例えば彼は頭がいい、彼女は可愛くてあの子は運動ができる。この子は思いやりがあって、兄弟はコミュニケーションが上手だ。自分もああなりたい、こうなりたい……と」
それは誰だってあるだろう。私だって一つや二つある。
「この世界は、本物の世界のそういった欲望の集合体なのですよ」
「つまり?」
つい続きを促してしまう。
「貴方達は、もう一人の自分の欲望の塊なのです」
欲望の塊? それは可笑しいのではないか? だって私達には、欠点だって……「その代わり向こうの自分が持っているものを、皆さんは持っていない。真逆なんですね。まあ、理想に代償はつきものということです」
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かぐや(プロフ) - 水の犬。さん» 水の犬。様有難うございます!共感していただけて嬉しいです。お気づかいの言葉まで有難うございます…!面白いと思っていただける作品作りを心がけますので、今後ともどうかよろしくお願いします! (2019年2月19日 20時) (レス) id: f6494d153c (このIDを非表示/違反報告)
水の犬。(プロフ) - 初めまして!コメント失礼します。お話すごく面白かったです!主人公の気持ちで共感できる部分がたくさんあり、お話の世界に入り込んでしまいました(*∵*)更新、無理しない程度に頑張ってください! (2019年2月19日 18時) (レス) id: 1e3c02421b (このIDを非表示/違反報告)
かぐや(プロフ) - ありしあさん» お褒めの言葉有難うございます…!そんな風に言っていただけて本当に嬉しいです…!よい文章、物語を作り上げられるようこれからも頑張ります、どうかよろしくお願いします! (2018年3月24日 12時) (レス) id: f6494d153c (このIDを非表示/違反報告)
ありしあ(プロフ) - すごい…文章がよくまとまっていて、とても読みやすいですね!謎めいた事件から始まるストーリーも、先の展開が気になってしょうがなくなります! 次の更新も楽しみにしてますね! (2018年3月23日 21時) (レス) id: 8ee049553d (このIDを非表示/違反報告)
かぐや(プロフ) - すわさん。さん» そうなんですね、教えてくださり有難うございます…!そう言っていただけてとても嬉しいです! (2018年3月11日 19時) (レス) id: f6494d153c (このIDを非表示/違反報告)
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