〈ツイステ〉 ねじれた世界の御伽噺 第二十幕

第六章26＿好感度は等しい ページ27

ヴィル「アタシ達は “全力”だった。でも、“万全”じゃなかった。
アタシは、アンタたちメンバーを“万全”な状態でステージに送り出すことができなかった。VDCで優勝できなかったのは、アタシのせい。
本当に、リーダー失格よ」



瞳に翳を落としている。
同時にその表情は、何もかもの責任を負うという様な、強固な表情を浮かべていた。

自身の正直な思いを吐露したヴィル先輩に、全員が目を丸くして黙り込む。
彼が抱え込む後悔、そして責任感の強さに驚きと感嘆していた。
気高く美しい。そして自分に甘えをみせないヴィル先輩だからこその言葉なのだろう。



その中、「ヴィル先輩の仰りたい事は分かります」と口を開いたのはジャミル先輩だった。



ジャミル「しかし、VDCの練習中にも話題に上がりましたが……大会当日のパフォーマンスの出来以前に、ネージュたちの世間からの好感度は相当なものです。
例え、俺達が“万全”な状態だったとして、ステージで“全力”が出せたとは限らない。そして“万全”な状態での“全力”を出せても、優勝できたかどうかはわかりません。好感度というものは、努力や実力では埋めがたいものですから」


つい最近まで何もかも諦めざる人生を送ってきた彼だからこそ、言葉の重みはある。
彼も、努力や実力があっても、それを糧に勝負する事が出来なかった人生を歩んできたからな。

それに同意するようにカリム先輩も「責任を感じる必要ねえって！」と声をかけた。
2人の励ましともとれる言葉に「そうね」と静かに息を吐きながら呟く。




ヴィル「でも、ネージュ達にはネージュ達なりの努力や苦労がなかった訳じゃないはず」



始めて、彼の口からネージュさんをねぎらう言葉を聞いた。
それも作られたものではなく、彼の本心から。



ヴィル「アタシも彼らのパフォーマンスを見た瞬間、動揺して強い否定の言葉を使ってしまったけど……大衆性をそなえ万人を摂り込む努力と、技術を研鑽し万人を圧倒する努力は、どちらも等しく“努力”。アタシたちと彼らは、努力の方向性が違っただけ」



ライバルと認めているからこそ、ネージュさんの事をそこまで分析しているのか。
努力家だで、本当に強い人だ。
自身が負けた相手を皮肉無しに評価する何て………この学園にいる逆恨みばっかの連中に聞かせてやりたいよ、この言葉。

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