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｢頭が良かったのも、運動が出来たのも私。
それでも涼子は皆から可愛がられた。
”可愛いね”、”優しいね”……ええそうよ、涼子は皆に優しかった。愛想だって良かった。
でも私が愛想が悪かったり、優しくなれなかったのは私がそうなるように育てたお母さんとお父さんのせいよ、誰が責められるっていうの？｣
そんな妹、好きになれるわけがないだろう。
泣きそうになる。
何が悲しくて、世界で一番嫌いな女の息子に心情を吐露しなければならないのだろう。
顔を上げれば、微かに眉尻を下げた彼と視線が交錯した。
ああ、もう。
なんで一つ一つがそんなにあの子に似ているの。
｢それでもあの子は私を姉だと慕ってくれた。
……馬鹿よね、私はあの子が大っ嫌いだって言うのに。｣
馬鹿だ。
確かに涼子は自分に頭の出来は及ばなかったが、自分の避けるような素振りに気づかなかったはずがない。
＿＿だって、自分と目が合う度に顔を引き攣らせていた。
ふふ、と笑う声。
彼は笑っていた。
｢何がおかしいの!?｣
｢……意外と伯母さん、母さんを過大評価してるな、と。｣
母さん、そんな人じゃありませんよ。
頭に血が上る。
お前に何が分かる。
たかだか十数年の付き合いのお前に。
｢そもそも僕が伯母さんのことを知っているのは母さんから聞いたことがあったからです。
……母さん、多分伯母さんが思っているような人間じゃありませんよ。｣
ふ、と落ちた昏い影。
旦那様、と言いかけていた自分にハッとした。
｢母さんは良くも悪くも他人の目を気にして生きてきました。
祖父母……ええと、母さんと伯母さんにとってのご両親ですね、からの”優しくて可愛くて愛想がいい娘”という期待に応えなければ、と思って貴女に執拗に話しかけていたみたいですよ。｣
浮かべた笑みを絶やさぬままに言った彼。
一瞬、頭が真っ白になった。
まっさらな笑みが音を立てて崩れていく。
目の前の、あの子の息子はそんなまっさらな笑みを浮かべていた。
笑い声が溢れる。
我慢ならなかった。
部屋に反響するような笑い声に、彼が訝しむような表情を浮かべる。
｢……良かった｣
良かった、あの子が完璧ないい子じゃなくて。
良かった、それをあの子から直接伝えられなくて。
良かった、あの子の健気な演技に騙されて。
ずっと降り積もってきた憎しみも嫌悪も消える訳じゃないけれど、幾分か軽くなった気がした。
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名前はまだない - イナイレ小説の中で1番好きです... 主人公のキャラや設定、性格などが刺さりすぎてやばいです。更新楽しみに待ってます！ (2021年7月3日 10時) (
レス) id: 567784a46c (このIDを非表示/違反報告)
あかや(プロフ) - コメント失礼します！！面白すぎて一気読みしてしまいました…主人公君のキャラ？性格？とても好きです！なんて言うか、飄々とした感じの… 続き待ってます！！ (2021年4月2日 16時) (レス) id: eed553f04a (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 度々コメント失礼します！大好きな作品なので何度も読み返しては楽しんでいます！もし可能であれば、主人公が松風天馬君と同年代で帝国に入学という設定でイナイレgoシリーズの話を読んでみたいです！これからも作者様のペースで頑張ってください！ (2020年11月18日 14時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湯葉 | 作成日時：2020年10月7日 7時
