【歌い手】ストックホルム症候群【あほの坂田】

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制服が長袖なので
傷や痣を隠すことができて重宝している。


だけどスカートと靴下の間の傷たちは丸見え。
帰り道、周りの人たちからの顔が歪んでる。


憐みの目だ。



その制服も、縫い目がたくさん。
せっかく国の方にお金を出してもらったのに。

新しいものをもう一度買うわけにもいかず
自分で縫って直しているけれど
もう糸がなくなりそうだな。


HRで帰りの挨拶が終わり、
先生がそそくさと教室を出ていく。

扉が閉まった瞬間から、
帰りだす生徒にぶつかられて
椅子から落ちて床に倒れこむ。

そして謝罪を要求される。



「…ごめ、なさい。」


そう言うと、お腹を、ちょうど鳩尾のあたりを、
蹴られて、


「かはッ…」


お腹を押さえて蹲る。
痛い、でももうこんな痛みにも慣れてしまった。
家ではもっと痛いから。



ひとり教室に取り残されて、
ぐちゃぐちゃになった鞄を拾い上げて、
痛む体に鞭を打って、立ち上がり
教室のカギをかけて、職員室に鍵を返しに行く。

すると、入り口のところに人だかりが見える。
女の子たちだ。校則が軽いためか
明るい髪色と短いスカート。


そこから覗くのは私なんかとは違うきれいな足。
メイクも綺麗で可愛らしくて



私なんかとは違うんだって思うと
ここにいるのが苦しくて、
でも鍵を持って帰るわけにもいかないので

覚悟を決めて横を通る。


「うわ、あいつ来たし。」

「鞄きったな…扱い悪すぎでしょーｗ」

「坂田せんせーLINE教えてよー。」


あなたたちがボロボロにしたくせに、

なんて言い返す権利はない。


無言で鍵を返して
帰ろうとすると


「ねぇ、君！」


女の子たちの群がりをすり抜けて


私の腕をつかんだ。



最近出来たばかりの
青い青い痣を。


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