《魔入間》参りましょうMyGirl！6

194:少年、不屈 ページ29

あんなにヤバいヒトだと思わなかった――と、後に彼の被害者であるアンドロ・M・ジャズは語る。

バイト先で以前知り合った大人達からなんとか入手した最高級魔具(結局パチモンだったが)”悪鬼金庫”に1年生2人を隠した…と見せかけ。使い魔のスプに音楽祭でプルソンが使用した”神秘の幕”をつけ、自分が囮になっている隙に最早相棒となったアロケルのもとに送り込む。
計画は上々だった。サブノックのような強固な肉体もアロケルやAのような秀でた知恵も自分にはない。ならば残るは根性だと腹を決めた。最長66分、さすがに殺されはしないだろうとタカをくくり―――耐えてみせるつもり、だった。

「水責め、電撃、圧迫…と。さて！大体の慣らしは終わったかな！」
「(こｯ殺されるかも…！)」

担任もなかなか無慈悲な悪魔だと思っていたが、このヒト――…マルバス・マーチという拷問学教師は別の意味でヤバかった。
時間稼ぎに話をそらそうとしても無駄。ただただ行われる、暗証番号を吐かせるための拷問。なんか変なムカデ出してきたし五感喪失するかもとか言ってるし誰だよ使用許可出したの？！暗黒大帝か？！

「うーん…Aはもうちょっと耐えれてたんだけど」
「、っはァ？！なﾞｯ、アンタあの子にﾞ､ィﾞｯ…！ぐぇ…ッ！」
「あ。なんだ！まだいけそうだね！」

Aに？これをしたって？あんなっ…あんな！ちっさくて細っこくて優しい可愛いAに！？

「(そうだ…このヒトはAの師匠！
Aが唯一！他とは違う顔を見せるヒトだ…ｯ！)」

Aは基本的に、ふにゃっとしている。1番多いのは困ったような悩んでるような顔で、焦ったり照れたり。笑ったり。その表情に問題児クラス達は日々癒されているのだが

「自分がどれほどの痛みに耐えられるのか。知っておくのは大事なことだからね！」

拷問学の授業。マルバス先生の前では途端にｽﾝｯ…と表情を無くすのだ。
かと言って嫌っているわけではなさそうで…それがずっと不思議だったけれど。今、ようやくわかった気がする

「悪いけど、そろそろ弟子の様子を見に行きたくて！
まだ時間もかかりそうだしやっぱりこの針針ムカデを使うね。大丈夫！医療班も待機してるし僕ならサクッと終わらせられるから」

あれは

「よし！じゃあ始めようか！」

あれは彼女なりの…
この”ヤバいヒト”に向けた



『こらーーーッ！！！
何してるんですかっ！マーチ先生のばかぁあーーーッ！！』

“反抗“の表情だったのだと。

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