神様にもわからない＃2 (ページ24)

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天馬の家で家政婦を始めてもう何日が過ぎたかわからない。

都内の一等地に構える大豪邸は、『一人で住むには少し広い』なんてものではなかった。

寮よりはるかに広い敷地にはじめは戸惑ったけど、それだけやることも多くて余計な事を考えないで済むからその点は助かっている。

天馬はというと、仕事が忙しいのか帰ってくるのはいつも22時を過ぎている。

それだけ天馬が凄い役者だという事だろう。

私はいつも天馬が帰って来るまで待っていようと思うけれど、最近はどうしても21時頃には眠たくなってしまって帰りを迎える事が出来ないでいた。

そんなある日、天馬が唐突に出掛ける準備をしろと言ってきた。

どうやら仕事が休みらしい。

天馬「チケットが二枚あるから誘っただけだぞ」

「はいはい、さいですか」

天馬「準備できたか？」

「ん、オッケー」

天馬「俺の変装も大丈夫だよな？」

「大丈夫大丈夫」

玄関を出ると井川さんが車を準備して待っていた。

休みじゃないのか尋ねると、本当は休みだけど天馬を一人で出歩かせるとロクな事にならないからという理由で来てくれたのだ。

当初は電車で行くつもりをしていたらしい天馬だが、出掛ける計画を知った井川さんはそれを阻止すべく迎えに来たんだとか。

「だからあんな念入りに変装のチェックしてたんだ。だいたいすぐ迷子になるんだから大人しく送ってもらお、ね？」

天馬「迷子になんてならないわ！まあでも、Aがどうしても車がいいって言うなら」

「うんうん、どーうしても車がいい。だから送ってもらお。先乗るよ」

天馬「しょうがないな。井川、そういう訳だから送ってくれ」

井川「はい。目的地はどこですか？」

天馬「天鵞絨だ」

「え？」

聞き間違いじゃないよね？

今天鵞絨って言った？

天馬「今日はMANKAIカンパニーってとこの『ロミオとジュリアス』って舞台を見に行く。そういえばお前を拾ったのも天鵞絨だったな。あの辺に住んでたのか？」

「え…あ…。うん」

天馬「あ……悪い。あんまりいい思い出じゃなかったか」

「いや、そんな事ないよ！楽しいこともたくさんあったから！
前住んでたとこの人たちとは喧嘩別れ？見たいな感じになっちゃっただけだし。全然平気！」

天馬「そうか？ならいいけど」