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「何本耐えられるか──がはっ」

 浦瑠が次の矢を装填するよりも前に、神威が浦瑠を殴り飛ばした。放したクロスボウをキャッチし、握力で破壊する。

「これでもうクロスボウは使えないね。俺としては殺す前に、アンタにこの矢をブッ刺したいところだよ」

「それは私も大いに賛成。いっぺん廃人なってみろや」

「なるほど、それも悪くない。どうせ殺されるなら、何もわからぬ状態で死ぬほうが苦しまないだろう」

「おいアンタ──」

 神威が攻撃するより先に、浦瑠は内ポケットから出した薬を飲み干す。
 その直後、浦瑠の瞳は虚ろになり、何も喋らなくなった。ただじっと、涎を垂らして虚空を見つめている。もう、何も感じることのない物体。
 神威は拳のやり場に困って、Aに尋ねる。

「これ、どうするよ」
「……なんか、負けた気分」

 Aは困った顔で答えにならない返事をする。そして、早口で続ける。

「結局畑は塩害を受けて、浦瑠は納得して自我を手放した。どうせこの人、最後はこの薬飲んで星ごと心中するつもりだったんだろうな、懐に用意してたってことは。全部あっちの予定通りだもん」

「まぁまぁ落ち着きなって。どうせAは、ここの仕事が上手くいったらいったで、気に入らなかったんでしょ? なら、いいじゃないか。それに──」

 浦瑠にトドメを刺して、神威は低い声で笑った。

「──俺は負けてないからさ」





 阿伏兎率いる団員は全員合流し、一人残らず兵士を片付けていた。

「さすがに疲れた。団長達は上手くやってっかねェ──おっ、噂をすれば」

 Aを背負った神威が、阿伏兎達の前に来る。
 二人の背後には、煙を上げて燃え盛る宮殿が。こうしておけば、浦瑠の研究成果が誰かに利用されることもない。

「もう詩辺螺星に用はない。船に戻るよ」

「んで、この星はどーすんだ?」

「さぁね。秘書が作る報告書次第でしょ」

「気が乗らない……私のお仕事だからやるけど」

「なーんか嫌なことでもあったか?」

「今私は複雑な心境なの」

「阿伏兎はデリカシーがないね」

「団長に言われたかねェよ」

 いつものようなやり取りをして、艦艇に戻る。そこに来て、一番重要なことを思い出した。

「執務室の窓、割られてたんだった」

 被害は神威の部屋だけではないのだ。

続きます→←7-6



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夢宵桜(プロフ) - 琥珀糖さん» 読みにくくてすみません…。配色を少し変えてみましたが、如何でしょうか。 (4月1日 6時) (レス) id: 77ab0362c3 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀糖(プロフ) - 色盲とかではないのですが、背景と文字の色が同系統すぎて読めません。可能でしたら変更して頂きたいです。 (4月1日 1時) (レス) id: 02d9a0ed5d (このIDを非表示/違反報告)
夢宵桜(プロフ) - 名無し5059号さん» 見えない色と見える色を教えて頂けますか? 私は色盲についての知識が浅いため、今の配色のどの部分が見えないか教えて頂けたら、対処法を考えられるかもしれません。 (2月16日 23時) (レス) @page46 id: 77ab0362c3 (このIDを非表示/違反報告)
名無し5059号(プロフ) - 色盲で文字が見えないけど対処法ありますか? (2月16日 22時) (レス) @page1 id: 427c7b5a4d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夢宵桜 | 作者ホームページ:https://lit.link/dreamfairy  
作成日時:2023年12月13日 23時

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