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「……そうか。冥土の土産を持たせてあげようかと思ったけど」

 そう言って、浦瑠はクロスボウを取り出し構えた。

「これね、陶然草から抽出した高濃度のエキスが塗ってあるんだ。毒にはならないけど、一発で廃人にすることはできる」

 浦瑠の言葉に、Aと神威は身構える。当たれば、宮殿で倒れてた人達と同じようになってしまうのだ。

「大事な仲間が廃人になったまま生き続けるくらいなら、殺してあげたくなるでしょう? だから、冥土の土産を、ね」

「A、下がって。俺の前に出るなよ」

 神威が守るようにAの前に出る。
 Aは必死さを悟られないように、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「私達が死んでも、状況は変わらない。薬 物を星ごと消したい気持ちは理解できる。でも、住民を廃人にするようなやり方──」

「僕は別に正義感でやってる訳ではないよ。前王に僕の研究を否定されてね。住民や兵士に陶然草を使えば、もっと労働効率が上がるのに。まだ研究途中ですぐ廃人になっちゃうけどね」

 浦瑠は、前王を思い出す。
 陶然草を国からの支給品として中毒状態にさせれば、どんな命令も聞く国民になる、と提案してやったのに。
 陶然草から開発した薬を兵士に投薬すれば、恐れ知らずの強い兵が出来上がる、と教えてやったのに。
 今までの研究を、全て否定しやがって。

 開発した薬をこっそり官僚や一般市民に盛ってみたら、すぐ廃人になってしまった。尊い犠牲だった。
 鍛え抜かれた兵士は、一般市民よりは長くもった。それなら、兵士達を使えばいい。薬が蓄積されるごとに判断力を失うから、すぐに使えなくなる本物の農民は捨てて。兵に陶然草を育てさせて、その実験対象にもして。

 そんな崇高なる研究に、文句をつけるなんて。

 だから殺した。そして、星ごと全部壊してやろうと思った。

「うわぁマッドサイエンティストじゃん。ドン引き」
「そんなんより毛生え薬開発した方が儲かるよ」

 結局、浦瑠の過去編を聞かされたAと神威は、ジト目で素直な感想を漏らす。

「やはり、君達も僕の理念を理解してくれないんだね」

 悲劇のヒーローを気取ったようなことを言い、クロスボウの引き金をひいた。
 しかし、本当の悲劇は起こらなかった。

「こんなのじゃ俺に勝てないよ」

 神威の手が、矢を掴んでいる。

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夢宵桜(プロフ) - 琥珀糖さん» 読みにくくてすみません…。配色を少し変えてみましたが、如何でしょうか。 (4月1日 6時) (レス) id: 77ab0362c3 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀糖(プロフ) - 色盲とかではないのですが、背景と文字の色が同系統すぎて読めません。可能でしたら変更して頂きたいです。 (4月1日 1時) (レス) id: 02d9a0ed5d (このIDを非表示/違反報告)
夢宵桜(プロフ) - 名無し5059号さん» 見えない色と見える色を教えて頂けますか? 私は色盲についての知識が浅いため、今の配色のどの部分が見えないか教えて頂けたら、対処法を考えられるかもしれません。 (2月16日 23時) (レス) @page46 id: 77ab0362c3 (このIDを非表示/違反報告)
名無し5059号(プロフ) - 色盲で文字が見えないけど対処法ありますか? (2月16日 22時) (レス) @page1 id: 427c7b5a4d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夢宵桜 | 作者ホームページ:https://lit.link/dreamfairy  
作成日時:2023年12月13日 23時

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