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6-4 ページ38



 襲撃から逃げるAは、手持ちの武器を確認する。手榴弾も、煙幕も、ピストルの弾薬も底をつきそうだ。
 逃げるといっても、そもそも安全な場所があるのかすらわからない。いや、ないだろうと本能が告げている。

 先を見通せず、足がすくんだ。
 そして、戦場というのは、その一瞬が命取りになる。

「いっ──」

 Aは鍬で頭を殴られて、その場に倒れる。痛い、と言葉にすることすらできなかった。
 地面に流れる自分の血。雪に染み込んで赤い大地が広がっていく。脳震盪(のうしんとう)を起こしたのか、ぼんやりして身体が動かない。

 視界には、自分を追いかけていた男達の姿が。

──フォーク形の(くわ)で刺されたら、穴がいっぱい開いて痛そうだな。

 殴られた頭じゃ、もうそんなことしか考えられない。

 男が勢いよく鍬を振り下ろした。
 しかし、それがAに届くことはなかった。目の前に、見慣れた黒い華服の裾がはためく。

「神威!」
「ウチの秘書に手ぇ出さないでくれるかな」

 神威が鍬を掴んでいた。
 その顔に笑みはない。鋭く睨み、低い声で威嚇している。宮殿内ではあんなに楽しそうにしていたというのに。

「A、何でこんなところで倒れてるのさ。船にいろって、言ったよね」

 会話をしながらも、神威はAを追っていた男達を倒していく。
 船と聞いて、Aは爆破した神威の部屋を思い出す。

「こいつらが神威の部屋壊した。私は断じて何も悪くない」

 頑張って重い上体を起こしながら、農民達を指差した。
 そのうちの一人が反論する。

「いや壊したのはお前だろう!」

「オレジャナイ。アイツガヤッタ。シラナイ。スンダコト。略してオアシス」

「……全く状況が読めないんだけど」

 耐えかねて神威がツッコんだ。

「とにかく、あいつらのせいで神威の部屋は壊滅状態なの」

「そう、じゃあ死ね」

 言い終わる頃に神威の傘が男に突き刺さる。

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夢宵桜(プロフ) - 琥珀糖さん» 読みにくくてすみません…。配色を少し変えてみましたが、如何でしょうか。 (4月1日 6時) (レス) id: 77ab0362c3 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀糖(プロフ) - 色盲とかではないのですが、背景と文字の色が同系統すぎて読めません。可能でしたら変更して頂きたいです。 (4月1日 1時) (レス) id: 02d9a0ed5d (このIDを非表示/違反報告)
夢宵桜(プロフ) - 名無し5059号さん» 見えない色と見える色を教えて頂けますか? 私は色盲についての知識が浅いため、今の配色のどの部分が見えないか教えて頂けたら、対処法を考えられるかもしれません。 (2月16日 23時) (レス) @page46 id: 77ab0362c3 (このIDを非表示/違反報告)
名無し5059号(プロフ) - 色盲で文字が見えないけど対処法ありますか? (2月16日 22時) (レス) @page1 id: 427c7b5a4d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夢宵桜 | 作者ホームページ:https://lit.link/dreamfairy  
作成日時:2023年12月13日 23時

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