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女子の買い物に付き合ったことのない神威は、深く考えていなかった。が、それを後悔することになる。なぜなら。
「Aー。そろそろ決めようよ。もう2時間は回ったよね」
そう、女子の買い物は長いのである。
「だって、これってのがないんだもん。なんていうか、こう、ビビっと来るっていうか。運命の出会い的なのがあるんだよ」
「はぁー」
春雨でトップクラスの戦闘力を持つ神威は体力があるはずだが、なぜかとっても疲れを感じる。
「ちょっと〜、ちゃんとついて来てよ〜」
対照的に、Aはピンピンしている。その瞳は運命の出会いを求めて燃えている。せっかくの買い物だから、気に入る物を買いたいのだ。
さらなる出会いを求めて歩いていると、街並みの雰囲気がガラリと変わった。
瓦の屋根、赤い提灯、精巧な格子窓。江戸の旧市街とはちょっと違う、異国情緒あふれる街並み。
振り返ると、神威が少し驚いた顔をしていた。
「こんな場所もあったんだ」
郷愁を含んだ独り言を呟く。
「ここ、知ってるの?」
「故郷に似てるんだ」
心做しか、懐かしさ以外も混ざったような、複雑さを孕んだ声色だ。
「そうなのね。あ、そこの店の服、神威が着てる服と似てない?」
そう言ってAが入ったのは、
──決めた。ここで買おう。
並べられた服を見て、早くも決断する。
気になるデザインを手に取って、試着室を借りた。
「神威、どう?」
試着室を出たAは黒い
ちょっぴり大人な服装は、Aの纏う空気も変えちゃって、なぜか似合っていて……。
「お父さんそんなの許した覚えはありません!」
焦った神威の第一声はこうだった。
そして光の速さで試着室のカーテンを閉める。見とれてしまう前に。
「なんでそんなモン着てるの? それがいいの?」
カーテン越しに捲し立てる。
「いやぁ海賊の悪い女らしい衣装にしてみようと思ってさ」
悪びれる様子もなく、楽しそうに答えるA。セクシーで妖艶なおねいさんに憧れるお年頃である。見た瞬間ちょっと着てみたくなったのだ。
「それはダメだからね。他のにしなさい」
「えぇーケチー」
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夢宵桜(プロフ) - 琥珀糖さん» 読みにくくてすみません…。配色を少し変えてみましたが、如何でしょうか。 (4月1日 6時) (レス) id: 77ab0362c3 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀糖(プロフ) - 色盲とかではないのですが、背景と文字の色が同系統すぎて読めません。可能でしたら変更して頂きたいです。 (4月1日 1時) (レス) id: 02d9a0ed5d (このIDを非表示/違反報告)
夢宵桜(プロフ) - 名無し5059号さん» 見えない色と見える色を教えて頂けますか? 私は色盲についての知識が浅いため、今の配色のどの部分が見えないか教えて頂けたら、対処法を考えられるかもしれません。 (2月16日 23時) (レス) @page46 id: 77ab0362c3 (このIDを非表示/違反報告)
名無し5059号(プロフ) - 色盲で文字が見えないけど対処法ありますか? (2月16日 22時) (レス) @page1 id: 427c7b5a4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢宵桜 | 作者ホームページ:https://lit.link/dreamfairy
作成日時:2023年12月13日 23時