検索窓
今日:56 hit、昨日:96 hit、合計:21,930 hit

5-2 ページ28



「昨日、破鳥のトップを牢に入れておいたよ」
「ダ、誰ダッケソレ」
「おい、昨日あんなに騒いでたろ」

 目を逸らしてすっとぼけるA。笑顔でキレそうになる神威。気遣いを返せ。だって恥ずかしいから無かったことにしたいんだもん。

「その感じなら、もうアイツはいいの?」
「朝起きたらどうでも良くなってたよ」

 Aは席を立って、宇宙(ほしぞら)を映す窓を指でなぞる。

「この景色は、地球にいたら見れなかっただろうから」

 そして、振り向いて神威に向き直った。
 透き通った青玉(サファイア)の瞳と目が合う。

「ここでしばらく秘書をやるのも、悪くない気がして」

 そう言ってAはポケットから折り畳まれた紙を出して広げる。

「買い物に付き合ってくれる素敵な団長様がいるからね!」

 神威のポケットマネーでAが買い物をするという契約書を、印籠のようにドヤァっとつきつけた。

──俺の気遣いを返せ。

 こうして、第七師団の日常が幕を開ける。



「ということで、一番近いショッピングができる星はどこ?」

 制御室にて。
 正面の大きなスクリーンには、宇宙船につけられた外構カメラの映像や、星図、運転状況のパラメーター等が表示されている。
 それを見ながら、神威が近くの星にアタリをつける。

「ここからだと、2時の方向に美屯(ビトン)星があるみたいだね」

 美屯星。銀河中のファッションリーダーが買い物をする、星そのものがショッピングモールのような場所である。

「いいね。買い物にピッタリ」

 Aは二つ返事で承諾する。
 行き先が決まった宇宙船は、加速して星空を直進した。

「そういえば、阿伏兎は?」

 今日、Aはまだ阿伏兎の姿を見ていない。

「阿伏兎なら、団員達と昨日持ち帰った札束の枚数を数えてるよ」

「あ、そういえば、金庫壊せたんだった」

「大量に積み込んでたから、人海戦術で分けて数えさせるって阿伏兎が言ってたな」

「着くまで私も参戦してくる!」

 金勘定と言えばA。Aと言えば金勘定。稼いできた本人がいなければ始まらない。
 地球で普通に過ごしていたら絶対に触れない数のお(さつ)を触れるのだ。乗るしかない、このビッグウェーブに。

 元気よくパタパタと足音を立ててイベント会場ならぬカウント会場に向かうAを見送って、神威も制御室を後にした。

5-3→←5.感謝の心は忘れるな



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (32 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
49人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

夢宵桜(プロフ) - 琥珀糖さん» 読みにくくてすみません…。配色を少し変えてみましたが、如何でしょうか。 (4月1日 6時) (レス) id: 77ab0362c3 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀糖(プロフ) - 色盲とかではないのですが、背景と文字の色が同系統すぎて読めません。可能でしたら変更して頂きたいです。 (4月1日 1時) (レス) id: 02d9a0ed5d (このIDを非表示/違反報告)
夢宵桜(プロフ) - 名無し5059号さん» 見えない色と見える色を教えて頂けますか? 私は色盲についての知識が浅いため、今の配色のどの部分が見えないか教えて頂けたら、対処法を考えられるかもしれません。 (2月16日 23時) (レス) @page46 id: 77ab0362c3 (このIDを非表示/違反報告)
名無し5059号(プロフ) - 色盲で文字が見えないけど対処法ありますか? (2月16日 22時) (レス) @page1 id: 427c7b5a4d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:夢宵桜 | 作者ホームページ:https://lit.link/dreamfairy  
作成日時:2023年12月13日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。