4-5 ページ21
「攫われた時に取られたと思ったんだけど、アンタが持ってたのね! はわわわ、私の可愛い扇子ちゃんが」
「俺が投げたおかげで、Aが助かったんだからいいでしょ。この子は身代わりになったんだよ」
「そ、そうだけど」
なんかいい感じのことを言った感出してるのが少しムカつく。
しかし、そんなやり取りをしていたら、さっきの神威の姿はすっかり忘れたようである。
「とにかく、弁償してね!」
「わかったから。今は扇子よりも自分の心配をしな」
「ハイ言質取った!」
なんてやり取りをしたのち、Aは寂しそうな笑顔で神威に尋ねる。
「私、やっぱり売られるのかな」
その問いに、神威は笑顔で応えた。
「春雨第七師団の秘書を勝手に売るような命知らずは存在しないよ。俺が全員殺しちゃうからね」
喜んでいいのか、怒った方がいいのか。Aにそんなことを考える余裕はない。
「わ、私だって、黙って売られるなんてまっぴらなんだから!」
啖呵を切って、船室で見つけたピストルを構える。ちなみに、使ったことはない。どうせ狙っても当たらないから、せいぜい威嚇射撃のハッタリである。
「第七師団の秘書……だと?」
神威の言葉に反応したのは、破鳥のトップだった。
「そう。ちゃんと雇用契約書も結んだんだよ。ウチの秘書は優秀だからね」
「はん。簡単に攫われるこんな弱い生き物のどこが優秀なんだか──」
ぱぁん!
言い終わる前にAが発砲した。
もちろん当たるなんて奇跡が起こるはずもなく。
「ほう。奴隷の癖に、いい度胸だな」
無視して、Aはわざとらしい困り顔で神威に話しかける。
「こういうのって、会話を成立させてあげる必要ある? なんか腹立つから手に力入っちゃった」
「有能な秘書がいるマウントを取ろうとしてたのに」
全く不服そうに見えない笑顔で話す神威。視線の先は破鳥の団長である。
「それなら、有能な副団長も自慢してほしいモンだね」
茶番を繰り広げていると、阿伏兎が合流してきた。
「こっちの雑魚はほとんど片付けた」
「俺の分を残さないなんて、不出来な部下だよ」
「このすっとこどっこい」
全員が阿伏兎に気を取られているうちに、Aはそっとそこから抜け出した。
──今なら、他の人達を解放してあげられるかもしれない。
自己犠牲はしないが、勝算があれば動く。正義感なんて大層なモノは持ち合わせていないが、自分の精神衛生のために、できることはする。
49人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夢宵桜(プロフ) - 琥珀糖さん» 読みにくくてすみません…。配色を少し変えてみましたが、如何でしょうか。 (4月1日 6時) (レス) id: 77ab0362c3 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀糖(プロフ) - 色盲とかではないのですが、背景と文字の色が同系統すぎて読めません。可能でしたら変更して頂きたいです。 (4月1日 1時) (レス) id: 02d9a0ed5d (このIDを非表示/違反報告)
夢宵桜(プロフ) - 名無し5059号さん» 見えない色と見える色を教えて頂けますか? 私は色盲についての知識が浅いため、今の配色のどの部分が見えないか教えて頂けたら、対処法を考えられるかもしれません。 (2月16日 23時) (レス) @page46 id: 77ab0362c3 (このIDを非表示/違反報告)
名無し5059号(プロフ) - 色盲で文字が見えないけど対処法ありますか? (2月16日 22時) (レス) @page1 id: 427c7b5a4d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夢宵桜 | 作者ホームページ:https://lit.link/dreamfairy
作成日時:2023年12月13日 23時