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10万という大金を持ち歩くというのは心臓に悪い。今カツアゲされたら確実に死ぬ。色んな意味で。
だから、道行く人全てが敵に見えて疑心暗鬼にすら陥る。
──あの人、怪しい。
目に入ったのは、傘。肌を覆う包帯。見慣れない伝統服。
こんな日は日傘くらい差すだろう。
けれども、顔や腕など肌を露出する部分のほとんどを包帯で隠して、珍しい服装の人がいたら、本能的に身構えてしまう。
Aの財布には10万円。
きっとこちらに歩いてくる不審者(仮)はそんなこと知らない。でも、疑心暗鬼になってしまうのが人間なのだ。
警戒しながら、すれ違う。
当然のごとく特に何事も起きず、Aはホッとする。
その刹那、バサりと人が倒れる音がした。
Aは慌てて振り返る。そこには、すれ違った不審者(仮)が膝から崩れ落ちていた。Aは駆け寄って支えてあげる。
包帯越しとはいえ、アツアツに熱されたアスファルトに両手をついたら火傷してしまうだろう。肩を貸して日陰に連れていった。
「大丈夫ですか?!」
熱中症だろうか。包帯を緩めて顔色を見ると、なかなかに美形である。同年代だろうか。不審者呼ばわりして悪かった、と心の中で謝っておく。
「ん……日光無理……お腹空いた……」
Aが呼びかけると、うわ言のように呟いた。
朧げながらも意識はあるようなので、Aは近くの自販機で冷たい水を買って渡した。ついでに、転がっていた傘も青年の横に立てかける。
青年の横に腰掛けて、さっき自分に使っていた扇子で軽く仰いで風を送る。
「水、ちょっと貸して」
Aがそう言うと、青年は素直に渡してくれた。代わりに扇子を青年に持たせる。
ハンカチに軽く水を垂らして、濡れハンカチを頬に当ててみた。
「──っ」
ひんやりとした感覚に、青年は声にならない声を上げた。なんかちょっと可愛いかも。
首に当ててあげると、気持ちよさそうに息を漏らした。なんかけしからん。
これじゃあ、どっちが不審者なんだか。
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夢宵桜(プロフ) - 琥珀糖さん» 読みにくくてすみません…。配色を少し変えてみましたが、如何でしょうか。 (4月1日 6時) (レス) id: 77ab0362c3 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀糖(プロフ) - 色盲とかではないのですが、背景と文字の色が同系統すぎて読めません。可能でしたら変更して頂きたいです。 (4月1日 1時) (レス) id: 02d9a0ed5d (このIDを非表示/違反報告)
夢宵桜(プロフ) - 名無し5059号さん» 見えない色と見える色を教えて頂けますか? 私は色盲についての知識が浅いため、今の配色のどの部分が見えないか教えて頂けたら、対処法を考えられるかもしれません。 (2月16日 23時) (レス) @page46 id: 77ab0362c3 (このIDを非表示/違反報告)
名無し5059号(プロフ) - 色盲で文字が見えないけど対処法ありますか? (2月16日 22時) (レス) @page1 id: 427c7b5a4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢宵桜 | 作者ホームページ:https://lit.link/dreamfairy
作成日時:2023年12月13日 23時