紫の告白３ ページ44
「…様子おかしくなったんは年末くらいやと思うんすけど」
…錦戸、亮言うたかなあ…
Aの長年のストーカー
学生やったと思うけど、もう卒業したんやろうか
想像しとったよりも随分と痩せたその男は、ゆっくりと歩きながら話し始めた。
「…まあ案の定 出勤さえしなくなったんで、背に腹は変えられんやないすか」
えらい持って回った言い回しが特有で
プライド高くて生きにくいやろなあこいつ…
「盗聴器もカメラも仕掛けられんとなったら家ん中の様子知るんはそれ漁るしかないんすよ」
コートんポケットに両手突っ込んだまま、顎で俺ん後ろのゴミ捨て場を指した
「…そしたら、出るわ出るわ」
ポケットから取り出し、俺に向けて放る
…銀色の屑が滑るようにコンクリートの上を転がる
「最初はマイスリーやったのにワイパックスやらデパスやら…安定剤やろそれ。どんだけ飲ませとんねん」
…へえ。
なるほどこいつは怒っとんのかと
荒くなった語気で察する
…ああ、
おもろいなあ…
「まあ俺は医者やからなあ、不安定な自分の女放っとかれへんし、処方くらいついしてまうわ」
「…ほんならこれは？」
そいつはまたその四次元ポケットから、今度は見慣れた腕時計を取り出した。
「…あん人がクリスマスに買うたやつやろ、あんたのために」
「…」
「なんでこれがご丁寧に燃えないゴミん中に隠して捨ててあんねん」
「ふはは」
俺は遂に声出して笑ってまう
…ほんまに期待以上におもろいなあ！
「お前ほんまにすごいなあ」
「なんやねん…」
「クリスマスに他ん男宛のプレゼント買うてるあいつ付け回して、挙句の果てにゴミ漁って拾うとるんやろ？ いやあ、真似でけへんわ」
「…何がしたかったん？ 薬飲ませて依存させて家ん中閉じ込めて、自分なしでは生きてかれへんようにしたかったん？」
「…」
「ーー…救世主気取りか」
「…ちゃうよ」
…ちゃう
そんなしょうもない欲求は俺にはない
簡単やった
なんでもあらへん白い手紙を仕込むことも
近くまで行ったついでに青い傘を置いて帰ることも
自分の金で自分の飯代を出すことも
近所のガキにもろたカードをそれに添えることも
…気を許しとる友人に対して不審の種を植え付けることも。
…真冬にゴミ捨て場で張る勤勉なこいつには気の毒なことやけど
片手間にできるちょっとした仕掛けで
Aはみるみる狂っていったーー…
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たまご(プロフ) - okmrernさん» あ、なんか途中で送信しちゃったごめんなさい…！引き続きよろしくお願いします！ (2020年6月2日 17時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - okmrernさん» okmrernさま、お久しぶりですありがとうございます！ここまでされても私はこの村上信五とつきあいたい (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさま、お久しぶりですありがとうございます！ラスボスは一番そばにいるということでひとつ…！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ぐふ。さん» ぐふ。さま、初めてのコメントうれしいですー！！信五最強説です…！そしてビリヤード！素敵ですねそれ…ただ友達がいる設定にしてしまったなあの店員さん…… (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ゆき姉さん» ゆきえさん！コメントありがとうございます嬉しい！ほんとしんどい話でごめんなさいね…いつもありがとうございます！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2019年8月18日 23時
