黄の告白２２ ページ45
「お前、マズローの欲求5段階説って知っとるか？」
…得体の知れない人間と向き合うんは、背骨と眉間に力が入るもんなんやと知った。
唐突に心理学の講義が始まり、つい2年前まで学生やった俺はその真意がわからんまま
強制的に受講生に引き戻される。
「生理的欲求やろ、安全の欲求、所属と愛の欲求、承認欲求、あと自己実現の欲求や」
「…」
「そんなもん、俺はとっくに達成しとるんや」
「…」
「毎日食うにも寝るにも困らんし、仕事は好きやしな。女にも困らんかったし病院行きゃ患者に必要とされて、人生に足りないもんなんてあらへんかった」
…なんのマウントやねん
彼女を自分の物にしたくて足掻いてた俺らを嘲笑うように余裕めかして天井を見ながら語り
それから…また視線を俺に戻した。
“…5段階の上に、ほんまは「超越的な自己実現の欲求」ゆう段階があるんよ”
“我を忘れるほどに何かに没頭したいゆう欲求やな”
“…俺の人生で一度もそんな瞬間はなかった”
“別にそれでもええんやけどな、あいつと会って気づいたんや”
“…俺はずっと安定した毎日に風穴を開けてくれる女を求めとった”
…それは、あまりに傲慢な独白やった。
「…Aに会うて話聞いた時思ったわ。こいつには周りの男を狂わせるなんかがある」
目の前…
「お前もそうやろ、Aにさえ会わなけりゃゴミ漁りする羽目になんかなっとらんかった思わんか？」
愉快そうに “そんな風になれること自体心底羨ましいわ” と
そいつは歯ぁ出して笑いーー…
「…せやけど」
笑っていた、
その眼が、据わったーー…
「普通に暮らしとったら、あいつはみるみる回復してった、まともやったわ、まともでつまらん女にどんどん変わっていった」
「…せやから彼女を追い詰めたんか」
「ん…せやなあ、俺かて我を忘れるほど狂ってみたくてあいつん側におるのに、こんままやとただの退屈な…」
「ーー…あんたはもう狂っとる！」
ーー…俺は。
「…あんたはもう…とっくに狂っとる」
…俺は、怒りで震える
誰かのために、
こんなに湧き上がるような怒りに支配されることは、
生きていて、初めてのことやったーー…
「…そうか」
そいつは驚いたように目ぇ剥いて
「…そうかもな」
嬉しそうに笑うとーー…
持っていたチャッカマンで新聞紙に火をつけたーー…
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たまご(プロフ) - okmrernさん» あ、なんか途中で送信しちゃったごめんなさい…！引き続きよろしくお願いします！ (2020年6月2日 17時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - okmrernさん» okmrernさま、お久しぶりですありがとうございます！ここまでされても私はこの村上信五とつきあいたい (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさま、お久しぶりですありがとうございます！ラスボスは一番そばにいるということでひとつ…！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ぐふ。さん» ぐふ。さま、初めてのコメントうれしいですー！！信五最強説です…！そしてビリヤード！素敵ですねそれ…ただ友達がいる設定にしてしまったなあの店員さん…… (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ゆき姉さん» ゆきえさん！コメントありがとうございます嬉しい！ほんとしんどい話でごめんなさいね…いつもありがとうございます！ (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2019年8月18日 23時
