隣の飼い猫【緑】８ ページ26
「ありがとうございました」
私は引っ越しのお兄さんたちにお礼を言い、自分の力で借りたそのアパートの部屋を見渡す。
積み上げられた段ボールの山をひとつ開け、食器を一枚ずつ、キッチンの棚へ収納していく。
あれから２か月ーー…
飼い主に別れを告げた私は、晴れてようやく…
野良猫になった。
「あ…これ、ヨルの…」
紛れ込んでいた、その銀色の水皿を見つめていると。
ぴんぽーん、
ここには、オートロックなんていう洒落た設備はないから。
「おー、やっとるかー」
彼がキャリーに入れたヨルを連れてにょきりと、顔を出した。
あの日ーー…
「お前ここ住んで？」
がんじがらめで動けなくなっている私に彼が差し出した、思ってもみなかった提案…
「…どゆこと…？」
「…好きな女が他の男に囲われとる俺のストレスを軽減しろってことやろ」
憮然とした表情で、察しの悪い女は嫌いだとばかりに言い放つ
私は、てっきり、目障りだから追い出したいのかとーー…
受け取ったチラシを見る、都心の一等地に6畳のワンルーム、
「…ほんまは無理矢理うち連れてったろかなとも思ったんやけど…それもなんかちゃうよなって」
かろうじてバストイレ別、新築、敷礼は2.1、最後のひと部屋…
「…ここやったら目の前やし、お隣さんみたいなもんやろ」
その言葉に、思わず顔を上げた。
「…私が出ていかない理由、なんでわかったの？」
「俺のそばにおりたいって顔に書いとるもん」
「うそ」
「はは、お前こないだエレベーターで俺がおねえちゃん連れて帰った時の自分の顔わかっとるかぁ？ ほとんど泣いとったで？」
「うそ！」
「俺そん顔見たら萎えてもーてそんまま女の子帰したもん」
「うそぉ？」
「うん、ごめんそれは うそやねんけどなぁ」
「……」
「はは、ほんまやって、泣くなやぁ」
彼はふわりと私を包む、猫をあやすように優しく髪の毛を撫でる
「…俺もうすぐ誕生日やから、プレゼント合鍵でええわ」
私は彼の背中に腕を回し、大きく息を吸う
５月に生まれた、この人は
猫の大好きな
日だまりの、匂いがするーー…
そして彼の肩越しに、受け取ったチラシの続きを読むと。
「…ペット不可だよここ」
「俺がヨル引き取るから遊びにくりゃええやん」
「…他の女の子に撫でさせない？」
「そしたら引っ掻いてええで、ファンの子には『最近飼い始めた猫にやられました』て言うから」
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たまご(プロフ) - くりくりさん» くりくり様、お返事遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございました！ラスト駆け足になってしまいましたが、少しでも気に入っていただけたなら幸せです。今後ともよろしくお願いします！ (2019年9月5日 4時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - まっきーさん» まっきー様、いつもありがとうございます！緑さんのお話、書いた当初は自信なかったんですが、今では結構好きなお話です。7人揃う日まで気長にお付き合い頂けると嬉しいです…！ (2019年9月5日 4時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
くりくり(プロフ) - 初恋ごっこ、読み終えて胸が苦しくて愛おしい気持ちが溢れて一言お伝えせずにいられなくなりました。更新が待ち遠しいです！ (2019年8月25日 15時) (レス) id: f2b0afbb33 (このIDを非表示/違反報告)
まっきー(プロフ) - どのお話も素敵でした！とくに大倉君のお話が堪らなく好きです(*´∇｀*)最高です！！お忙しいとは思いますが、更新楽しみに待っています！！ (2019年8月15日 20時) (レス) id: 76f56a80a0 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ひよりんさん» ひよりんさん！コメントありがとうございます、まさかひよりんさんに読んでいただける&コメントまでいただけるとは思わず二度見しました…！うれしいですありがとうございます、今後とも何卒よろしくお願いします…｡ﾟ(ﾟ´ω`ﾟ)ﾟ｡ (2019年8月15日 16時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2018年4月30日 14時
