隣の飼い猫【緑】７ ページ25
そしてーー…今。
「…どういうつもり？」
「なにがー？ ヨルに会いにきただけやん、俺こいつに引っ掻かれた仲やし、なー？」
彼はあの時と同じように床に寝転がり ぐるりと身体を反転すると…
あの時私を抱いたみたいに、お腹の上にヨルを乗せた。
「他人の飼い猫には興味ないんでしょ…？」
「お前は誰かと違うてなりたくてなったわけちゃうもん、なー？」
彼女の黒い両前脚を掴んで引き寄せ、私に見せつけるようにキスをする。
「うちの子になるか？ かわいがったるでー？」
…その横顔は、愛しいものを見る目をしていた。
ーー…あれからずっと私には蔑むような視線しか注がないのに
この人はなんでこんなふうにまでして、わたしをいじめるんだろう
寝転ぶ彼の側に立ち尽くしながら、視界にすら入らないーー…
無駄に広いリビングが余計、寂しさを際立たせていた。
「…帰ってよ」
「んー？ 家主やないやつに言われてもなあ」
視線をヨルから外さぬまま、彼は歯牙にもかけぬというようにのんびりと言い放つ
「ーー…」
言い返す言葉が、見つからなくて震える手を握る
悔しくて
沈黙する私に、苛立ったように彼は
「そう言われんのが嫌なんやったらさっさと出てけばええやろ」
ーー…ようやく冷たい目で、こちらを、見た。
……
言われなくてもわかっていた
誰かに囲われている分際で
彼と対等なフリをして
何が、“よき隣人”なのかーー…
「……」
私は視線をそらさず
そらせず
彼の眼に晒され続けて
涙が、たまってくる
頭に、血がのぼる
でもーー……
「…絶対、出てかない…」
「ふーん…そんなに飼い主の男のことが好きなん？」
「…違う」
「ならなんでーー…」
「だって…」
だってーー…
軽蔑、されても
別の女の子を連れ込んでいても
ここに住み続ければ、あなたのお隣さんでいられるーー…
……
「あー！ ほんっま世話焼けるやつやな…！」
黙る私に焦れたように語気を強める、
ヨルを乱暴におろすから彼女は翻って着地の姿勢をとる、
彼は立ち上がる、ずかずかとさっき椅子に置いた荷物を取りに、
帰るの、
かと思ったら、ぐしゃぐしゃと、何かをーー…
「ん」
大股、たった数歩で、私の目の前まで
掴んだそれを差し出してくる
チラシ、
不動産…？
「コンビニの跡のアパート、入居者募集やって。家賃８万くらい自力で払えるやろ」
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たまご(プロフ) - くりくりさん» くりくり様、お返事遅くなってごめんなさい！コメントありがとうございました！ラスト駆け足になってしまいましたが、少しでも気に入っていただけたなら幸せです。今後ともよろしくお願いします！ (2019年9月5日 4時) (
レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - まっきーさん» まっきー様、いつもありがとうございます！緑さんのお話、書いた当初は自信なかったんですが、今では結構好きなお話です。7人揃う日まで気長にお付き合い頂けると嬉しいです…！ (2019年9月5日 4時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
くりくり(プロフ) - 初恋ごっこ、読み終えて胸が苦しくて愛おしい気持ちが溢れて一言お伝えせずにいられなくなりました。更新が待ち遠しいです！ (2019年8月25日 15時) (レス) id: f2b0afbb33 (このIDを非表示/違反報告)
まっきー(プロフ) - どのお話も素敵でした！とくに大倉君のお話が堪らなく好きです(*´∇｀*)最高です！！お忙しいとは思いますが、更新楽しみに待っています！！ (2019年8月15日 20時) (レス) id: 76f56a80a0 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ひよりんさん» ひよりんさん！コメントありがとうございます、まさかひよりんさんに読んでいただける&コメントまでいただけるとは思わず二度見しました…！うれしいですありがとうございます、今後とも何卒よろしくお願いします…｡ﾟ(ﾟ´ω`ﾟ)ﾟ｡ (2019年8月15日 16時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2018年4月30日 14時
