5.悪意しか無いカレーうどん ページ7
貴方.side
それから出会って数日、一週間未満の頃の事。
未だかつて経験した事が無いくらいジンジンと痛みを訴える額を両手で覆い、
滅多に上げない奇声を大声で発しながら俺はフローリングの床を転げ回る。
こうなった原因であり、張本人の彼は鼻歌を歌って再度キッチンへと向かっていた。
言わずもがな、正に
「晩飯、何か希望ある?」
それでも耳栓でも詰めているのかと疑う程、普通に接してくる彼にドン引きしつつ
のそりと起き上がっては彼を追って台所へと足を運び、
「おい、コラ」と叱責されながらも、冷蔵庫を勝手に開いて覗いた。
「カレーうどん食べたい...」
「俺に借りた服、また汚す気しかねぇじゃん」
「失礼な、純度百%の願望だよ」
全くの嘘で、オニーサンの言った通りだけどね
だが大事な材料であるカレールー自体が無いらしく、
最終的にはあっさりと却下される。
数分お兄さんと駄弁っていると調理の手伝いを催促されたが、
前の住居は料理被害を理由に追い出された事を伝えると
直ぐに手のひらを返して、
キッチンから居間に引き返せと言い聞かせる様に強く言われた。
彼の薄情な分かり易い態度に苦笑いを溢しながらもソファーに座り込んで、
料理するお兄さんの光景をジッと見守る。
「さとみサン、さと君、さとちゃん、さっくん」
「何だ、それ」
「呼び方? って言うか渾名ッス
どれが一番良い感じ?」
話題転換のつもりでパッと適当に思い付いた渾名を考え無しに口に出すと、
「別にどれでも」と冷たく返される。
そんな中、自分の携帯からこの場に不相応な通知音がリビングに響いた。
嫌な冷や汗が頬や首筋を伝うが、どうやらそれは杞憂に終わったらしい
蓋を開けてみればメールでもチャットでも無く、唯のアップデートのお知らせ。
安心して溜め息を零せば、今度は完全に油断していた彼から追い討ちをかけられる。
「何故、実家は頼らなかったのか」と
両手の指先同士だけを合わせて、微弱に震える口を少しの間だけ噤み
落ち着いてきたら、お気楽な喋り口調で必死に言い訳の言葉を紡いだ。
「関西の方だし、ちょっと遠いからさ」
そう笑って誤魔化せば、返ってきたのは「へぇー」と自分から聞いたのに素っ気ない返事
まぁ、変に関心持たれるよりかは全然マシだ。
家の中では、俺達の会話の声と調理の音だけが響く。
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矢代(プロフ) - さらさらさん» 貴重な感想、有難う御座います! (2022年7月24日 20時) (レス) id: 47e380d88a (このIDを非表示/違反報告)
さらさら - と、尊いが過ぎる…!! (2022年7月24日 15時) (レス) @page32 id: 4475130a0e (このIDを非表示/違反報告)
矢代(プロフ) - ネコ日和。さん» ゑ、あ....い、生きてくだせえ!!(必死) (2022年7月11日 20時) (レス) id: 47e380d88a (このIDを非表示/違反報告)
ネコ日和。 - ぶわああああああ‼ちゅ、ちゅーした‼??やばい、え、どう、あ……(困惑)悶え死ぬ運命しか見えん…笑 (2022年7月9日 21時) (レス) @page29 id: 18b130b5d8 (このIDを非表示/違反報告)
矢代(プロフ) - ネコ日和。さん» 反則級にイチャつかせました(笑) 大丈夫、ショタ好きは共通性癖です😌👍。ラフの状態ではもっと距離近いかも...、作者の私でも「もっとやったれ!!」ってなってるから多分皆そうだと思う(妄想)。 (2022年7月3日 20時) (レス) id: 47e380d88a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:矢代 | 作成日時:2022年6月5日 15時