29.腹減りシリアスクラッシャー ページ31
貴方.side
温もりの残る部屋から窓を開けて深夜特有の冷気が漂うベランダに飛び出れば、一気に肝と腰が抜けて体温が下がっていく感覚。
再度溢れ出した涙は留まる所を知らず知らずの内に自身の要領をガン無視して唯只管流れ続けた。
「最高にさいあく...俺らしく、はあるけどさ
マジ無理みがつよ、こんなんインスピも湧く筈ないじゃん」
独り言を繰返しては溜め息を毎秒の様に吐き出す
嫌気はずっとさしていたが、漸く気持ちの整理と区切りが完結した頃に暫く上げていなかった顔を宙に向けて
瞳が瞼と涙袋を飛び越えるくらい、夢中になって星屑が均等に散らばった夜空を眺める。
「あれが
ホント、教えて貰った通りなんだな」
とても小さな窓から見詰めた、幼少期の夏の星空
幼かった自分の周りを鉄格子で囲まれたみたいな環境、雁字搦めにされていた過去の記憶に、今では感謝でしかないと思っている。
娯楽物が少なかったそんな時代、親にすら打ち明けられずに偲ばせていた苦悩と退屈を紛らわせたのは今と変わらずこの夜空だ。
不満がなかったと言えば嘘になるが、過去の事を現在振り返ってみれば
今悩んでいる事よりもずっとちっぽけな事だったと瞬時に判断出来るだろう。
「兄上に姉さんにクソ兄貴、元気かな」
ここまで千文字程度で綴ってきた彼への想いは、未だに古臭くて締め付けが激しい家に留まる家族の事を思い返せば
意外にもあっさりと方向転換出来て、路頭に迷う事など無いに等しかった。
色情的に此方を崇拝する事は一切なかったが、毎回毎回こっちの都合も考えずに狭苦しい部屋に突撃してきては骨が折れるくらい抱き締めて首元の匂いを嗅ぐのは最後までやめて欲しかったな
なんて、今更なのに昔のあらゆる事柄に感傷的な気分で浸りつつ頬に笑みを浮かべる。
「父上、貴方の馬鹿息子は
東京で元気に好きぴのすねかじってま、す」
言葉の途中で声が途切れたのは、腹の虫が急に暴れ始めて大きく産声を上げたせい
最後までちゃんと言わせてよ、決め台詞なんだからと悪態を吐きながら小汚いベランダの
ココ最近はあまり空腹を感じていなかった筈なのに、腹鳴に気付けば案外自分はお腹が空き易い体質なのかもと思考を張り巡らせる。
窓硝子を再び開けて、室内に身を乗り出せば瞳の端に映る彼の寝顔
「...起きててよ」
本心で漏れた言葉じゃないのは自分でも分かってる。
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矢代(プロフ) - さらさらさん» 貴重な感想、有難う御座います! (2022年7月24日 20時) (レス) id: 47e380d88a (このIDを非表示/違反報告)
さらさら - と、尊いが過ぎる…!! (2022年7月24日 15時) (レス) @page32 id: 4475130a0e (このIDを非表示/違反報告)
矢代(プロフ) - ネコ日和。さん» ゑ、あ....い、生きてくだせえ!!(必死) (2022年7月11日 20時) (レス) id: 47e380d88a (このIDを非表示/違反報告)
ネコ日和。 - ぶわああああああ‼ちゅ、ちゅーした‼??やばい、え、どう、あ……(困惑)悶え死ぬ運命しか見えん…笑 (2022年7月9日 21時) (レス) @page29 id: 18b130b5d8 (このIDを非表示/違反報告)
矢代(プロフ) - ネコ日和。さん» 反則級にイチャつかせました(笑) 大丈夫、ショタ好きは共通性癖です😌👍。ラフの状態ではもっと距離近いかも...、作者の私でも「もっとやったれ!!」ってなってるから多分皆そうだと思う(妄想)。 (2022年7月3日 20時) (レス) id: 47e380d88a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:矢代 | 作成日時:2022年6月5日 15時