13 ページ25
酒の勢いもあってか、全部をぶちまけたくなった。
俺をヒーローみたいに言った理紗に、そんなんじゃないって知らしめたくて。
「笑いたきゃ笑えよ。
俺は小さいころからずっと翔くんのおまけで…何をしたって敵わなくて」
そう、ずっと。
劣等感を感じてた。
翔くんのことは好きだったし、尊敬してたけど。
俺は一生、あの人を越えられないんだっていつも思い知らされてたんだ。
「けどさ、本気だったんだよ。
今でもすっげえ後悔してる…なんであんなことしちゃったんだろうって。
いまだに女か酒か睡眠薬に頼らないと眠れないし」
自分が情けない。
どんだけ悔やんだところで、時間は戻らない。
あの二人とはもう…元の関係には戻れないんだ。
不意に。
項垂れる俺の手を、理紗がキュッと握った。
「大丈夫です」
「…は？何が…」
「松本さんはちゃんと反省してるし、後悔してる。
それを伝えれば、きっとわかってもらえます。
松本さんは奇跡を起こす人なんですから」
真剣な目で語る理紗。
そんなうまくいく訳がないのに。
「無理だね」
「無理じゃありません！
嫉妬は人間として当たり前にある感情です。
私だって、何度松本さんの女を妄想上で殺めたことか！」
「はあ…？」
「殺人鬼です、私。妄想上でですけど」
何言ってんだよ、さっきから。
妄想？殺人鬼？
何の話だ？
「だから大丈夫です！私を信じて下さい！」
「何なの、お前…」
「わかりません…けど、私を頼って下さい」
「は…？」
「睡眠薬はありませんけど…
私をそういう対象として見られないのなら、それはそれで構いませんから。
子守唄ぐらいなら歌えますし」
理紗は何だか必死で、どうやら俺を元気づけようとしてくれてるらしい。
子守唄って何だよ。
やっぱりコイツ、ちょっとおかしいんじゃねえの。
…何だか笑えてきた。
変な女だし、同じ会社の子だし、俺のことをヒーローか何かと勘違いしてるみたいだけど。
さっき俺が理紗を可愛いって思ったのは、嘘じゃない。
「…じゃあ、子守唄でも歌ってもらおうかな」
「ホントに…！？」
理紗が、大きな目を見開く。
耳まで赤くなってる。
「後悔しない？」
「しませんっ！」
「ジョージとサラには秘密ね」
「…わかってます」
理紗の手を握り返したら、小さく震えてるのがわかった。
なぜだろう。
この時俺は、コイツを傷付けちゃいけないって、大事にしなくちゃって思ったんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4526人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さーちゃん - あと、幼馴染みも大学生の相葉君もすてきだと思います。よかったら、お友達になってくれませんか? (2017年1月6日 20時) (
レス) id: 9412fa705f (このIDを非表示/違反報告)
さーちゃん - yukoさんの作品をよんで、どれもすてきだなと思います。一番は相葉君の小説が好きです。会社員の相葉君もパティシエの相葉君も大好きです。高校で先輩の相葉君と後輩の主人公で卒業後は美容師の専門学校に通う相葉君を書いてほしいです。 (2017年1月6日 20時) (レス) id: 9412fa705f (このIDを非表示/違反報告)
しょうまい。(プロフ) - yukoさん» 書いてくださるんですね！楽しみにしてます(*´艸`*) (2017年1月5日 23時) (レス) id: 56364eb5ea (このIDを非表示/違反報告)
yuko(プロフ) - さねさん» さねちゃん、感想ありがとう♪お返しのチュー？二宮くん、実はオラオラ系だからね。←好きｗ可愛いふたりを好きになってくれてありがとう！社長のお話も書きます！ (2017年1月5日 22時) (レス) id: 7b49a3b518 (このIDを非表示/違反報告)
yuko(プロフ) - kiraさん» kiraちゃん、感想ありがとう♪はじめまして！嬉しいです、ありがとう！お話は一応時系列に並んでいて、次は３人家族になった櫻井家のお話になります。離れていた頃の社長の様子は、社長自身の話や二宮くんの回想で既にちょこっと書いていますので、それでお許し下さい。 (2017年1月5日 22時) (レス) id: 7b49a3b518 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：yuko
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=yashikonbu
作成日時：2016年10月10日 0時
