重力、夢中力…弐｡【中原中也】

(87)組合 ページ48

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「反吐が出そう…か。それはすまなかった。だが、」


耳元で重い衝撃音が響いた。
細かい破片が落ちる、パラパラと乾いた音も遅れて聞こえてくる。

肩をすくめずには居られなかった。



「口には気を付けたほうが良い。貴様は今、"捕われの身"だ」

『………』



喉が急速に水分を失っていく。

あと数センチ的がずれていたら、私の額は見事にカチ割れていただろう。

それよりも怖いのは直前まで何も悟れなかった事だ。
いくら目隠しがあると云えど、殺気やモーションくらいは感じるもの。

然し、今のは完全に虚を突かれた。
彼は相当な手練だ。


となれば、正面突破は選択肢から除外しよう。

でもそうすると、大凡他に手が見つからない。

抑々、奴等の目的は何だ？



＿＿＿君も真逆、相棒の結婚式を直前に攫われるとは思わなかっただろう？＿＿＿



"相棒"とは中也のことで、あの2人の結婚式直前に攫われるとは…という意味なのは判る。

じゃあ私は何故攫われたのか？

普通に考えると、2人の結婚に邪魔な存在と認識されての現状だと思う。

然し、何故犯人は異国人なのか。
其処が1番の疑問だ。羽須美が異国人を雇っているなど聞いた事はない。



『(あんな化物紛いな奴を雇ってるなら、リストアップされてる筈だし…)』



ゆっくりと、あの日の陽和の話を思い出してみた。



＿＿＿＿＿「そう云って彼の男……羽須美は私を攫いました」


＿＿＿＿＿「彼らは、マフィアから預かった武器を横流ししています」






＿＿＿＿＿＿「更には其の利益で組合という海外の組織と取り引きをしようとしています」






背筋が凍り、鳥肌が立った。
額から冷汗が肌を伝い、其れを拭えない両手は微かに震えを覚える。


気付かなければいけなかった。
だが、気付かなければ良かった事実。



『…組合(ギルド)……！』



私を捕らえたのは、彼らだ。



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