(82)彼女の過去と事実 ページ43
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争うような声と耳を裂くような銃声で目が覚めた。
蒸し暑い夏の夜だ。汗ばんだパジャマの襟元へパタパタと空気を送りながら、音のした方____居間へ向かう。
「あ"?…何だよ、餓鬼が居たのか」
暗くて顔は良く見えないが、知らない低い声だ。
何があったのか状況が掴めないが故に、足元をちゃんと見ずに一歩踏み出すと、裸足にヌルリと生温かい液体が触れる。
嫌な予感がした。
「っ…!!!」
段々と慣れてきた目で足元を見ると、其処には死体が転がっていた。2つの死体だ。
陽和には、其の2つが誰なのか直ぐ判った。
「お父、さん…お、母さん…?」
急速に喉が渇いていく。全身が震え、呼吸が上手くできなかった。
喉をヒューヒュー鳴らす彼女の背中を、何者かが優しく、慰める様に
反射的に後ろを振り返ると、其処にも知らない男が居る。
「貴方達は誰?お父さんとお母さんに何をしたの?!」
そんな声は恐怖に押し殺されて出なかった。
「大丈夫…君に危害は加えない。2人の大切な愛娘だからね」
有効的に利用できる日がきっと来る。
「そう云って彼の男……羽須美は私を攫いました」
『じゃあ君は羽須美の血縁でも何でもない上、勝手に婚約された挙句、顔立ちだけは良い幹部を相手にしたいと
「簡潔に纏めてくださって有難うございます」
『うん、つい説明口調になっちゃったよ』
Aの目は確かに丸く見開かれていたが、直ぐに何時もの顔に戻った。
驚いてはいる様だが、其処迄でもないらしい。
そして其の涼しい顔でこう云うのだ。
『で、其の屑共を本当に屑にするネタは?』
陽和は苦笑いを浮かべた。
矢張り彼女もポートマフィア上層の人間なのだと、改めて思う。其の事実は頼もしくもあり、怖くもあった。
否、恐い。
薄ら笑いを浮かべながら前述の台詞を云われると、厭でも不敵に見える。
「彼らは、マフィアから預かった武器を横流ししています」
『何、そんな詰まらない事なの』
「いいえ。更には其の利益で
『組合…ってオイオイ…嘘でしょ?』
今度こそ本当に驚いた様子のAが次は苦笑いをした。
「取り引きが成功した暁には、マフィアを裏切るつもりです」
『…思ってたよりも、全然事は大きいらしいね…はは』
ガチャ、とドアノブが鳴った。
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ヤマダノオロチ(プロフ) - Yuukiさん» ありがとうございます!やっと構想がまとまってきました。これからもよろしくお願い致します! (2017年2月18日 23時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
Yuuki(プロフ) - とても面白かったです!スランプで大変だと思いますが、これからも頑張ってください!応援してます!! (2017年2月18日 23時) (レス) id: 3720d37733 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 天さんさん» コメントありがとうございます!上から目線だなんてそんな事無いですよ!?お褒めに預かり光栄です(>_<)最近はラブソングばっか聴いてて、主と中也くっつけたい〜とか考えてます(笑)これからも頑張ります! (2017年2月14日 20時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
天さん - う、上から目線で失礼しましたぁああッ!! (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
天さん - スランプ大変ですよね…文章とか読みやすくて好きです!頑張ってください(*´ω`*)ちなみに、私はスランプの時は曲を聞いてます。曲聞いてるとネタがポンポン出てきますので…!これからも応援してます(´˘`*) (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2016年9月4日 20時