(83)Smile ページ44
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『嗚呼…やっと入ってきた。此の変態帽子』
「おう。とりあえず脳漿かち割るから此方来い」
扉を開けたのは此の部屋の主である中原中也であった。
また何時もの様にバチバチやりだす2人だが、流石に事が事なので大してエスカレートはしなかった。
「羽須美の件は昨日俺も聞いた。陽和は其れを式の当日に双方のオエライさんの前で云うつもりだ」
『へえ、其れは面白いね。私は座って決戦の合図を待っているだけでいいんだ』
Aはまたあの薄ら笑いを浮かべていた。
ニヤニヤと血色の良い唇が弧を描いている。
その表情が何処か狂気じみているのを感じて、中也と陽和は少しゾッとした。
思えば、Aは昔からそうだった。
挑発的、軽蔑的、自信的、自嘲的…と、"こういう仕事"の時においてはよく笑う。
(中也の失態を見ても必ず笑うのだが、其れは今は置いておいてほしい。)
『……まァ、反対だけどね』
「だな。俺もだ」
「えっ……」
思わず声を上げたのは陽和で、2人は其れを真っ直ぐと見ていた。
てっきり協力してくれるものだと思っていた陽和は困惑が隠せない。
中也は昨日ゆっくりと自分の話を聞いてくれたし、Aは先程好戦的な表情を見せたばかりだ。
「『何で?』って顔だな、陽和」
「っ…」
『ごめんごめん、楽しそうとは本気で思ったんだよ?私も』
__只、世の中には "大人の事情" とかいう理不尽なモノがある。
Aは話しはじめた。
式で先程の事実を公言すれば間違い無く其の場で双方が正面衝突する事。
そうすればかなりの犠牲とリスクが伴う事。
そして、仮にマフィアが羽須美を制圧したところで陽和は自由になれない可能性。
反対するには十分なものだった。
『だからさ、別に式じゃなくてもいいと思うんだよ。其の方が相手の油断も突けるし』
沈黙。
気まずそうに目を伏せた陽和を、Aの黒い瞳が映した。
「…駄目なんです…それだと、間に合わないんです」
『何か、理由が有りそうだね』
見透かす様な横顔が、いけ好かない元相棒に似ているような感じがして、中也は顔を逸らした。
彼は意外にも引き摺っているのだ。
あの兵六玉より先にAを救えなかったことを。
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更新が滞っていて大変申し訳無いです。
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ヤマダノオロチ(プロフ) - Yuukiさん» ありがとうございます!やっと構想がまとまってきました。これからもよろしくお願い致します! (2017年2月18日 23時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
Yuuki(プロフ) - とても面白かったです!スランプで大変だと思いますが、これからも頑張ってください!応援してます!! (2017年2月18日 23時) (レス) id: 3720d37733 (このIDを非表示/違反報告)
ヤマダノオロチ(プロフ) - 天さんさん» コメントありがとうございます!上から目線だなんてそんな事無いですよ!?お褒めに預かり光栄です(>_<)最近はラブソングばっか聴いてて、主と中也くっつけたい〜とか考えてます(笑)これからも頑張ります! (2017年2月14日 20時) (レス) id: b2832ff97e (このIDを非表示/違反報告)
天さん - う、上から目線で失礼しましたぁああッ!! (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
天さん - スランプ大変ですよね…文章とか読みやすくて好きです!頑張ってください(*´ω`*)ちなみに、私はスランプの時は曲を聞いてます。曲聞いてるとネタがポンポン出てきますので…!これからも応援してます(´˘`*) (2017年2月14日 19時) (レス) id: 6b9cd4fe2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2016年9月4日 20時