きっと其の四十八 ページ48
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__ポートマフィア本部ビル
中原は、執務室で苦い顔をしていた。
その手が持つのはAが送った報告書を印刷した紙。摘んでいる部分に力が入ったのか、少し
「
正直、数年前のあの後、嘗ての仲間がどうなったのか細かく知らなかった。
全員その場では無事であったことくらいしか判っていない。
考えれば考えるほど嫌な予感が募っていく。
二十歳前後で構成された、血塗れの"羊"。
そう考えてしまうのは、中原にとって必然だった。
今此処にあの
『だからあの時、殺しておけば良かったじゃないか』と。
あの日、彼らが自分にとった行動を思い出しては眉間に皺を寄せる。彼らを憎んでいるわけではない。
これからマフィアに対して、第一に同盟を組もうと考えている相手に潜入しているAに対して、彼らがどのような行動を取るのか。
それが中原の苦い顔を作っていた。
彼奴らがポートマフィアにどう仕掛けてこようが大した事にはならないだろう。
然しそれが単独で敵地に居るAだったらどうだ。
いくら彼女でも多対一では限界がある。
素直に云えば、Aが心配だった。
そんな中原の心配を見透かしたように、部下が1人部屋の戸を叩いた。かなり急いでいるのか、何時もよりがさつに音が鳴った。
入室を許可すると、「失礼します」も程々に転がり込むように入ってくる。
「どうした、何かあったのか?」
「幹部、Aさんの通信が途絶えました」
「……どういう事だ」
「いきなり発信機の反応が消失し、携帯に連絡しても応答がありません」
発信機が何らかの理由で壊されたと考えるのが妥当だが、Aの場合は空間系の異能がある。
まだ中原も話にしか聞いたことがないが、異能を遣ったと云われても恐らく納得はいくだろう。
どちらにせよ、Aが敵と交戦している可能性が大いに有り得た。
「第一小隊を呼べ。ヘリでシルクの現在の様子を中継させろ。もし変わった様子があれば直ぐに突入だ。……急げ!」
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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2018年2月5日 0時