検索窓
今日:4 hit、昨日:5 hit、合計:79,052 hit

きっと其の四十八 ページ48

.


__ポートマフィア本部ビル

中原は、執務室で苦い顔をしていた。
その手が持つのはAが送った報告書を印刷した紙。摘んでいる部分に力が入ったのか、少し()れている。


ブラッディシープ(血塗れの羊)、か……」

正直、数年前のあの後、嘗ての仲間がどうなったのか細かく知らなかった。
全員その場では無事であったことくらいしか判っていない。
考えれば考えるほど嫌な予感が募っていく。

二十歳前後で構成された、血塗れの"羊"。

そう考えてしまうのは、中原にとって必然だった。
今此処にあの放浪者(バガボンド)が居たら云うだろう。
『だからあの時、殺しておけば良かったじゃないか』と。

あの日、彼らが自分にとった行動を思い出しては眉間に皺を寄せる。彼らを憎んでいるわけではない。

これからマフィアに対して、第一に同盟を組もうと考えている相手に潜入しているAに対して、彼らがどのような行動を取るのか。
それが中原の苦い顔を作っていた。

彼奴らがポートマフィアにどう仕掛けてこようが大した事にはならないだろう。
然しそれが単独で敵地に居るAだったらどうだ。
いくら彼女でも多対一では限界がある。

素直に云えば、Aが心配だった。

そんな中原の心配を見透かしたように、部下が1人部屋の戸を叩いた。かなり急いでいるのか、何時もよりがさつに音が鳴った。
入室を許可すると、「失礼します」も程々に転がり込むように入ってくる。

「どうした、何かあったのか?」
「幹部、Aさんの通信が途絶えました」
「……どういう事だ」
「いきなり発信機の反応が消失し、携帯に連絡しても応答がありません」

発信機が何らかの理由で壊されたと考えるのが妥当だが、Aの場合は空間系の異能がある。
まだ中原も話にしか聞いたことがないが、異能を遣ったと云われても恐らく納得はいくだろう。

どちらにせよ、Aが敵と交戦している可能性が大いに有り得た。


「第一小隊を呼べ。ヘリでシルクの現在の様子を中継させろ。もし変わった様子があれば直ぐに突入だ。……急げ!」


.

きっと其の四十九→←きっと其の四十七



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (82 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
169人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2018年2月5日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。