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きっと其の四十七 ページ47

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その日の夜、シルク運搬が別組織への鞍替えを考えている事を記した報告書を送ると、次の朝には返信が届いていた。

ハッキングで通信網を探った結果、予想通り、最近勢力を拡大してきている組織との遣り取りが見つかった。内容もほぼAが考えていた通りだ。

組織の名前は『ブラッディシープ』。
最近、ポートマフィアも少し気にする程度に力を伸ばしている組織だ。
構成員の殆どが二十歳(はたち)前後の若者。
今年を二十歳を迎える私が云うのも何だか、そのような輩がマフィアに喧嘩を売るとは相当な怖いもの知らずだと思う。

只、まァ、これを機に潰せるのなら悪くない。


「__ちゃん、来週からの事で話があるって糸川さんが」
「はい、わかりました」

云われた通り、糸川さんの机へ向かった。

「ああ、__君。来週からは運搬の研修に移ってもらうので、そのつもりで」
「はい」
「がっつり力仕事ですが、ラスト1週間頑張ってください」
「ありがとうございます」

……やらされるのか、がっつり力仕事。
私、事務員で採用されたはずなんですけど……研修だから運搬の方も体験しとけってことですかね。
正直やりたくない。だがやるしかない。

この1週間、報告を云い訳にして何度中原幹部に電話を掛けようと思ったことか。
……何故中原幹部に掛けようと思ったのかは判らないが。一番、あの人の声が安心するからかもしれない。

「……は?」

思わず声が漏れた。
幸い誰にも聞かれなかったようだ。

今、自分は何を考えた?

不意に、『A』と自分の名前を呼ぶ彼を思い出しては掻き消した。

馬鹿か、何ナメた事を考えているんだ。
私が幹部に抱いていい"安心"の裏側には"畏怖"がある事を忘れてはいけないのだ。
彼が"味方で良かった"という安心、畏れ敬う事の裏返しからくる安心だ。

つまりそうだ、そういうことに違いない。


「研修生、手止まってるけど大丈夫か」
「ッ!すみません!」

通りがけに注意され、肩が跳ねた。
それから何時ものスピードで打ち込みをしようとして、慌てて手を緩める。

頭から湯気が出そうだ。最近は何時もそう。

中原幹部のことを考えると、調子が狂う。



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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2018年2月5日 0時

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