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きっと其の四十五 ページ45

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手短に施設を案内された後、簡単な事務処理を延々と行って1日が終わった。

正直、仕事の内容より、不慣れに見せることに疲れている。
作業自体は普段の書類作成より単純かつ簡単だ。数値と式を打ち込むだけで後はソフトが勝手に計算してくれる。いつも通りやれば30分もかからないものを40分かけなければいけない。

既に疑われているのだ。これ以上不審に思われ、情報を掴む前に叩かれては諜報活動にならない。

これがまだ1日目だと思うと憂鬱で仕方がなかった。

疲れた顔で帰り支度をしていると、隣で作業していた女性__いくつか歳上に見える__が話しかけてくれた。

「お疲れ様。……大丈夫?」

先輩は私の疲れ切った顔をみて苦笑を浮かべる。

「お疲れ様です。まあ、何とか……。これからよろしくお願いします」
「よろしく。初日で疲れたでしょう。今日はゆっくりお休みなさい」
「ありがとうございます。お先に失礼します」

ゆっくり休むどころか、これからもう一仕事控えている。

寮に戻ってまず初めに、カメラが無いか確認した。
流石にこれは出てこなかったが、その過程でいくつかの盗聴器が見つかった。予想通りだ。カメラより安価な為、多用される。

覚悟はしていたが、盗聴されていると判った上で生活するのは些か心地が悪い。
初日にして早くも自宅に帰りたくなった。

支給された弁当__晩御飯である__を食べながら、ぼんやりと今日の報告書の内容を考えていると、机の上に置いた携帯が震えた。メールだ。差出人の所を見て箸が止まる。


______立原からだった。


あの日以来、全く言葉を交わしていなかった。
正直、お互い避けている節が……否、ただ私が避けていただけかもしれない。

狡い話だと思うが、立原に返事をすることも謝ることもできていなかった。

プラスチック製の弁当箱に残った少量の白飯を頬張り、インスタントの味噌汁で一気に流し込む。
それから一呼吸ついて『開封』の釦を押した。


[ 件名︰久しぶり ]

最近話せてないから、元気してるかと思って…
敵地に潜入中らしいな。無理してないか?
困らすような事云って悪かった。忘れてくれ。
よかったら今度飯でも行こう。
無事に任務が終わることを願ってる。じゃあな。

立原




「思い出させといて忘れてくれって……」




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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2018年2月5日 0時

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