【文スト】きっと純愛 (ページ29)

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きっと其の二十九ページ29

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「首領、黒蜥蜴のAについて何か隠していますね？」
「……流石、とでも云うべきかね」

俺が薄々何かに勘付いているのも知っているようなこの男は何も見えない、余裕の表情＿＿いつもの顔だ＿＿で此方を向いた。

ここ最近、Aの様子が可笑しい。いつもは寧ろ向こうから声を掛けてくるのに、俺が声を掛けても上の空だったり、何かと考え事をしているように見える。

「時が来たら本人にちゃんと話すつもりだ。君が心配することは何もないよ」

まあ端(はた)から見れば確かに俺がAの心配なんてする必要はないのかもしれない。
直属でもない俺らは本来関わりを持つこと自体が稀で、五大幹部の俺と黒蜥蜴において特に肩書きを持たないA。
だが、共闘したこともあるし、時々呑みへも出かける仲だ。周りは知らなくても。

俺にとって、AAという人間は大切な＿＿

＿＿＿＿＿＿仲間、なんだ。

「……まァ、気になるなら本人に訊けばいい。君になら話してくれるだろう」
「俺になら？どういう意味ですか？」
「さあ、どういう意味だろうね」

含みを持った云い方に疑問を抱くが、俺の知らない俺まで見つめていそうな瞳から逃げるように「失礼します」と、その部屋を去った。
それから宛もなくフラフラと廊下を歩いていた。

「……A？」

廊下の突き当たり、事務室の先。そこに居たのはAとブロンド髪の女性だった。Aよりも少しばかり背が低くて、肌は白い。一目見る限りでも外国人なのだとわかった。

談笑などをしている様子は更々無く、寧ろその雰囲気は険悪に近い。何かトラブルだろうか。もしそうだとしたら放っておけない。
気になった俺は少しだけ陰から耳を澄ませた。

「＿＿て思ったんだけど、違う？」
「……流石ね"アリス"。こんなに早く私を見つけるなんて」

『アリス』と呼んだのは紛れもなくAじゃない声。どういうことだ？何故Aが"アリス"なんだ？
首領の云っていた"隠し事"と何か関係がありそうだ。

「順番が逆なのは、まあいいわ。この際私が全部教えてあげる」
「…"ワンダーランド"で？」
「ええ、勿論」
「でもそれってどうやって行く……んっ？！」
「……A！？」

先程2人が居た場所には、もう誰もいなかった。

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