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きっと其の二十四 ページ24

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甘い焼菓子と上品な紅茶の香りが漂う。
其処は明らかに現実世界ではなかった。

先程まで寂れた廃屋で任務を全うしていた筈の私は、一瞬にしてどこへ迷い込んでしまったのだろうか。

気付けば、芝生の上に据えられたテーブルに座っていた。長テーブルの端…俗にいう『お誕生日席』という場所だ。

向かい側に7歳くらいの少女が座っていた。
その容姿は可憐で、綺麗なブロンドの髪に添えられた青いリボンがアクセントを効かせていた。


「やっと来たのね、"アリス"」


"アリス"…?

……そうか。この少女を見たとき感じた既視感は『アリス』だ。幼い頃、絵本で見た『不思議の国のアリス』に酷似している。


「私は"アリス"じゃない。あなたの方がアリスみたいだよ」
「それはそうよ。わたしも"アリス"だもの」

云っている意味がさっぱり判らなかった。

「あなたはアリス、わたしもアリス。さて、なぜ2人もアリスがいるのか…あなたはわかる?」
「抑々、私は"アリス"じゃない。私の名前はA。AAよ。あなたは?」
「……ああ、そうね、まずは自己紹介よね。わたしったらうっかりしてたわ」

少女はきょとんとした後、海のような深みのある青眼を細めてクスクスと笑った。

「わたしの名前はアリス・プレザンス・リデル。よろしくね?」
「よろしく、アリス」
「ああ、変なの。アリスにアリスって呼ばれるなんて」
「さっきから私を"アリス"って呼ぶけど、それはどういう事なの?何回も云っているけど、私は"アリス"じゃない」
「…そう……一寸ずつ感じてはいたけど、あなた、何も知らないのね」

アリスは哀しげに云った。

それからカラフルなティーカップに紅茶を注いで、Aへ差し出す。

「なら、教えてもらいなさい。きっと然るべき人が居るはずよ。あなたがあなたをわかったとき、またこの国へ招いてあげるわ」

アリスが紅茶を啜ったので、つられてAも口を付ける。すると、途端に目眩が襲ってきた。

それはまるで、夢から醒めていくような感覚。


「早く来てね、"アリス"。じゃないとわたし、いつまでも寂しいわ」


暗転した視界に、幼い声が響いて消えた。



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作者名:ヤマダノオロチ | 作成日時:2018年2月5日 0時

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